★農民工逆流 「世界の工場」中国の現場で何が?
2020年6月16日 16時26分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200616/k10012471581000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200616/K10012471581_2006161222_2006161352_01_05.jpg

※一部抜粋、全文はリンク先へ
※見出しのみは全て略
※リンク先に写真多数

新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んだとして、経済の立て直しにかじを切る中国。しかし、「世界の工場」と言われる南部、広東省では、失業の波が押し寄せていた。
農村出身で「農民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者たちが、仕事を失い故郷に引き揚げる逆流現象が発生。
至るところに「工場譲ります」という紙が貼られた地区もあり、不満を訴える抗議活動も起きている。中国の生産現場で何が起きているのか、現場を歩いた。(広州支局長 馬場健夫)

■「世界の工場」に広がる失業の波

4月上旬、広東省のある地区で異変が起きていると聞いて、取材に向かった。高層ビルが建ち並ぶ広東省広州の中心部から車で15分。衣料品を生産する町工場が集まる場所だ。

広東省は、中国の衣料品生産の4分の1を占めるとも言われる。中国全土、そして海外に向けて出荷する一大生産拠点だ。
工場が集積する広東省には、中国各地の農村から出稼ぎ労働者が仕事を求めて集まる。今回訪れたのは、新型コロナウイルスの感染が最も深刻だった湖北省出身の人たちが多く住む「湖北村」と呼ばれる地区だ。
通りは、仕事を求める労働者であふれかえっていた。仕立て代が1着180円程度のシャツの縫製作業に、大勢の人が群がっていた。仕事を探す人たちは、みな疲れた表情。

ある男性は、こうぼやいた。
「例年より仕事が少なく、単価も安い。よい仕事が見つからない」
道端には、町工場の営業担当者たちも注文を求めて座り込んでいる。手にする看板には「顧客募集。シャツ、ワンピース作れます」などのことば。しかし、注文にやってくる顧客の姿は、ほとんどない。

■出稼ぎ先に戻ったものの…

■農民工の「逆流」

■「工場譲ります」の貼り紙を訪ねて

■失業者は7000万人超?

中国の生産現場に押し寄せる失業の波は、「湖北村」にとどまらず、広東省の各地に広がっている。
世界的な感染拡大による受注の減少は、中国経済のV字回復どころか、働く人の生活の基盤そのものを脅かし、不安が広がっている。

習近平指導部は5月、重要政策を決める全人代=全国人民代表大会を2か月遅れで開催したが、例年示してきた経済成長率の数値目標を示せなかった。
世界的な感染拡大の影響が、読み切れなかったからだ。

その一方、雇用対策を徹底する方針を繰り返し強調した。
雇用の問題を放置すれば、労働者の不満が高まり、その矛先は政府にも向かいかねないという危機感を持っているからだろう。

一部の地域では、すでに不満を訴える抗議活動も起きている。香港メディアは、「湖北村」でも、4月中旬に町工場の人たちが賃料の値下げなどの支援策を求めて、地元政府への抗議デモを行ったと伝えた。

関係者から提供を受けた映像には、「賃料を下げろ!」とシュプレヒコールを上げて多くの人が通りに繰り出し、一部の参加者が警察に拘束される様子が写されている。

中国政府が発表している都市部の失業率には、故郷に引き揚げた農民工は含まれていない。
中国のシンクタンクの専門家によれば、中国全土の実際の失業率は20%余り、失業者は7000万人を超えるという推計もある。

「世界の工場」と言われてきた広東省で、生産を支えてきた農民工たちは工場に戻ることができるのか、先行きは見通せない。