自民県連はや後任模索、広島3区 案里氏の失職濃厚、夫妻そろって自民離党へ
2020/6/17
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 自民党の河井克行前法相(衆院広島3区)と妻案里氏(参院広島)が国政で握る広島県選出の二つの議席を巡り、与野党による候補者選びの号砲が16日、事実上鳴った。広島地裁が案里氏の公設秘書に懲役刑の有罪判決を言い渡し、案里氏が失職する可能性が高まった上、河井夫妻がそろって自民党を離党する意向を固めたからだ。「ポスト河井」をにらんだ駆け引きは、激しさを増していく。

 「河井夫妻が離党したら次の衆院選、参院選で誰がそこに座るのか。即刻集まって、決めなければならない」。広島県議会の中本隆志議長は16日、県議会棟の議長室で明快に答えた。自民党県連の副会長として、宇田伸幹事長と近く上京し、党の二階俊博幹事長に案里氏を離党勧告か除名処分にするよう「嘆願」する腹づもりだったという。

 案里氏は、昨年7月の参院選広島選挙区での公選法違反罪(買収)で公設秘書の懲役刑が確定した場合、連座制が適用されて失職する流れとなっている。後任を選ぶ参院広島選挙区補選の時期は、参院選の「1票の格差」訴訟の判決確定を待つため、早くても来年4月が見込まれている。

 補選について、複数の党関係者の間で取り沙汰されているシナリオの一つが、参院選に党現職として立ちながら落選した溝手顕正氏の担ぎ出しだ。ある党県連幹部は「案里氏が違法な手段で勝ったのであれば、まずは溝手氏に立候補を打診するのが筋だ」と指摘する。支援してきた県内の首長たちにも待望論はある。

 参院議員を5期務めた溝手氏は77歳。党県連内には「この機会に若返りを図るべきだ」との声も強い。具体的な候補者として、湯崎英彦知事の名前も挙がる。ただ、関係者によると湯崎知事はこの春、党県連幹部に対して否定的な姿勢を示したという。

 ▽「岸田派の好機」

 党県連は広島3区についても、克行氏が離党すれば新たな公認候補者を選び、党の議席維持を狙う見通し。衆院の解散時期によっては、参院補選の前に投開票となる可能性があるため、広島3区の選考を急ぐべきだとする意見もある。

 河井夫妻の後釜となる人選では、党の岸田文雄政調会長(衆院広島1区)の指導力に期待する声が出ている。溝手氏は岸田派の重鎮で、案里氏は二階派、克行氏は無派閥。ベテラン県議は「岸田派の勢力を広げ、『ポスト安倍』として弾みをつける好機」と見立てる。

 対する野党。昨年の参院選では、旧民主党の流れをくむ立憲民主、国民民主両党と社民党が共闘態勢を組み、無所属で立った森本真治氏をトップ当選させた。

 立憲民主党県連の若林新三幹事長は参院補選に加えて、衆院広島3区補選もあり得るとみて「野党でタッグを組み、自民党の金権政治に対抗したい」と強調。国民民主党県連の福知基弘幹事長も「政治とカネの問題を引き起こした政権与党に勝ちたい」と同調する。共産党県委員会も、候補者の一本化に前向きだ。

 ▽野党は調整難航

 ただ、それぞれの選挙区の事情は複雑だ。参院補選では、野党の候補者が勝利した場合、現職の森本氏と同じ2025年に改選を迎える。森本氏のライバルとなりかねない状況を踏まえて、野党関係者には「無理をして候補者を立てなくても良い」との意見がある。

 広島3区では、立憲民主党が3月、元会社役員の新人の擁立を決めた。これに対し、国民民主党県連では「独自の候補者を立てるべきだ」との声がくすぶる。両党の調整は候補者選びから難航しており、共闘の旗が立てられるかどうかは微妙な情勢となっている。(樋口浩二、宮野史康)