新型コロナウイルス禍では、緊急事態宣言が解除された後も、感染リスクの高い最前線に立つ医師や看護師らと、その家族に対する差別や偏見が続いている。一方で、情報の公開や住民との交流を通し、差別や偏見を改善させた医療機関もある。東京などでは新規感染が続き、第2波が懸念される。医療体制の強化が叫ばれる中、足元の医療スタッフへの差別・偏見対策はまだまだ不十分だ。【吉田卓矢/統合デジタル取材センター】

 「仕事を終えた後、タクシーの乗車を拒否された」「子どもが保育園の登園自粛を求められた」「なじみの定食屋から来店しないでほしいと言われた」

 日本看護協会は、4月6日から新型コロナに関する相談窓口を開いている。6月1日までの相談件数は685件に上り、中には差別や偏見に関するものもあるという。同協会は他にも「夫が勤務先から休むよう言われた」「子どもが学校でいじめに遭った」といった事例を公表し、対策を講じるよう訴えている。

 毎日新聞が4月下旬に全国57の特定・第1種感染症指定医療機関に行ったアンケートでも、回答した25機関のうち、10機関が嫌がらせや偏見を受けたと回答している。

 関東地方のある病院は、転院が必要な入院患者の受け入れを拒否されたほか、病院内でも、発熱外来の担当職員が他の職員から「触れたところが汚いから消毒しろ」などと暴言を浴びた事例があったと取材に明かしている。

 こうした事態に森雅子法相も「(医療従事者らに対して)不当な差別を行うことは許されるものではありません」(4月3日の閣議後記者会見)と述べるなど問題視している。法務省によると、新型コロナ関連の相談はこれまでに約1200件。最も多かった4月中旬からは半減したが、6月に入っても週100件ほどの相談があるという。

 一方、東京都江戸川区の東京臨海病院は、実態を公開することで差別や偏見が激減したと明かす。同病院は、2月に帰国者・接触者外来を開設。一般病…(以下有料版で、残り1873文字)

残りの見出し「全スタッフにPCR検査、結果を掲示」

毎日新聞 2020年6月19日 06時30分(最終更新 6月19日 06時30分)
https://mainichi.jp/articles/20200619/k00/00m/040/001000c