子育てに積極的な男性の略語「イクメン」が新語・流行語大賞のトップ10に選ばれたのは2010年。厚生労働省はこの年、男性の子育て参加や育児休業の取得を促進しようと「イクメンプロジェクト」をスタートさせた。全国でイクメンパパは増えているのか。6歳未満の子どもを持つ男性の1日あたりの家事・育児の平均時間で山口県が東京都に次いで2位、佐賀県も6位に食い込む一方、福岡県はワースト県をわずか1分上回っての44位。九州・山口でも地域差がこんなにあったとは――。【井上和也】

 イクメンに注目したのは、福岡県が06年の社会生活基本調査(総務省)の「父親の育児時間」で「全国のベストワン」とPRしているのを見つけたからだ。1日あたりの平均時間が全国の約2倍だった。それがどうだろう。16年実施の介護なども含めた男性の家事・育児の平均時間調査でほぼ最下位とは。

 県男女共同参画審議会の委員でもある九州産業大の窪田由紀教授は、地元男性の数値の低さに「がくぜんとした。福岡は他県に比べてまだまだ男子厨房(ちゅうぼう)に入らず、というところはあるが、残念。もっと意識を変えていかないと」と話す。

 「地方の方が意識が芽生えている」と指摘するのは、10年10月にNPO法人ファザーリング・ジャパン九州(福岡市)を設立した宮原礼智代表(48)。「九州男児」のイメージが強い父親たちを楽しみながら積極的に子育てする男性にしていこうと講演や料理教室、絵本の読み聞かせなどの活動をしてきた。お膝元で苦戦を強いられているものの「家事は浸透していないが育児率は上がっている」という。

 同支部設立間もないころ、宮原さんが講演依頼を受けた大分県は06年の調査で全国最下位だった。県は09年度から「子育て満足度日本一」を目指し、男性の参画を重点課題の一つとして10、11年度には6回ずつ子育てパパを中心に講座を開催。これをきっかけに参加者らがサークル「おおいたパパくらぶ」を立ち上げ、現在は約20人のメンバーがイクメン普及に一役買っている。県の取り組みから10年、大分の男性の家事・育児時間は最下位時より52分延びている。

 「日本一を目指す」と公言している大分や順位は2位でも「まだまだ家事時間としては少ない」と冷静に受け止めている山口、そして下位に甘んじている福岡。来年10月実施予定の5年に1度の調査が興味深い。

毎日新聞 2020年6月21日 09時38分(最終更新 6月21日 09時38分)
https://mainichi.jp/20200621/k00/00m/040/028000c