宮城県内公立高の普通教室へのエアコン設置が進まない。文部科学省が昨秋調べた設置率はわずか3.6%。新型コロナウイルス感染症による臨時休校が長引き、大半が夏休みを短縮して授業時間を確保する。しかし、県教委は財政負担を理由に整備には消極的。マスク着用の過酷な夏を乗り切るため、各校は熱中症予防などの対策に頭を悩ませそうだ。
 文科省の2019年9月時点の調査によると、県内公立高の普通教室1264室のうち、エアコンがあるのは46室。全国平均の設置率は83.5%で、宮城は北海道(0%)、青森(1.7%)に続き3番目に低い。
 設置済みの教室が多い学校を見ると、仙台二(仙台市青葉区)は、PTAの資金援助で全24室に取り付けた。新校舎建設中の石巻好文館(石巻市)はプレハブ校舎に15室、県総合教育センターと同じ建物にある美田園(名取市)は5室にそれぞれ配備した。
 県教委施設整備課の担当者は「校舎の建て替えやバリアフリー化を優先し、エアコンまで予算が回らない」と釈明する。試算では、全ての普通教室への整備費は約56億円、維持費が年2億円かかる。建て替えを進める宮城一(仙台市青葉区)、石巻好文館、柴田農林(大河原町)の新校舎にも設置しない方針だ。
 仙台二のように県に頼らず、独自に費用を捻出する学校も少なくない。仙台三(仙台市宮城野区)は卒業生の寄付などを活用し、全24教室に7月末までの設置を目指す。
 2年の三浦悠大さん(17)=多賀城市=は「マスクをしていると熱がこもって集中できない。エアコンがあると勉強の集中力が上がる」と歓迎する。井上健一教頭も「学習効果が全然違う。先輩たちのおかげ」と卒業生の善意に感謝する。
 仙台二華(仙台市若林区)は、PTAの協力で全19教室への設置を終えた。
 仙台管区気象台が発表した東北地方の6〜8月の3カ月予報によると、気温は平年並みか高い見込み。エアコンなしで真夏の授業をしのぐため、扇風機を増やしたり、授業中の水分補給を呼び掛けたり、各校は独自の対策に取り組む。
 築館(栗原市)は気温と湿度で熱中症の危険があると判断した場合、生徒に半袖、ハーフパンツで授業を受けることを認める。中新田(加美町)はエアコンがある三つの特別教室に加え、比較的日当たりが悪く室温が上がりにくい教室の活用を模索する。布施孝介教頭は「先生を含めて、校内で大きなアクシデントがないよう十分に注意したい」と話す。
 県高校PTA連合会は今年2月、エアコンの早期整備を求める要望書を県教委に初めて提出した。三塚明彦事務局長は「不満を募らせる保護者も多い。子どもの健康に関わる問題であり、英断を求めたい」と訴える。
 同じ公立高でも、仙台市立の4校は夏休みまでに設置が完了する。東北では、秋田は臨時休校で授業が遅れた受験生が夏休みでも学習できるよう、3年の教室に設置する予定だ。

河北新報 2020年06月21日日曜日
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202006/20200621_23008.html