6/28(日) 15:30
産経新聞
タピオカ特需だったストロー、いまや耳鼻科と運送業で脚光 3月まで売り上げゼロも…コロナ禍で注文殺到
クリーンルームで検査されるシバセ工業の医療用ストロー=岡山県浅口市
 プラスチック製の使い捨てストローの需要がにわかに高まっている。世界中の外食やホテルチェーンなどでストローや包装を紙に替える「脱プラスチック」が広がっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているという。国内トップメーカーのシバセ工業(岡山県浅口市)では、運送会社のドライバーが使うアルコール検知器の吹き込み口や、医療機関で使用する薬剤噴霧器のカバーの用途としての引き合いが急増。これまでメインだった飲食向けに並ぶ商品に成長しつつある。

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 ■3月まで売り上げゼロだったのが…

 「最初は見向きもされなかったものが、急に『うちでも欲しい』といわれ出した」

 シバセ工業本社営業部長の玉石一馬さん(54)が話題にしたのは、約2年前に開発した「医療器具カバーストロー」(1本10円)。院内感染の拡大を防ぐ目的で、医療機器メーカーと共同で手がけた。

 耳鼻科で、患者の鼻に薬剤を噴霧する機器の先端部にカバーとして使用する。ストローは患者の粘膜と接触するため、1人の患者を診察したらすぐに捨てる。これまでは医師が患者の診察で薬剤噴霧器を使用するたび消毒液で消毒するのが一般的だったが、ストローを着用することで衛生面を一段と高められるという。

 開発当初は引き合いはなく、今年3月までの売り上げはゼロだった。ところが、新型コロナ禍で院内感染の懸念が深刻になったことから、医療機器メーカーが医師らに再度聞き取りや売り込みをしたところ、注文が殺到。4、5月の医療器具カバーストローは2万本を出荷したという。

 ■乗車前のアルコール検知に

 同じように伸びているのが、アルコール検知器の吹き込み口に使うストローだ。

 運送事業者は、ドライバーの乗務前、運転者の顔色や呼気、声の調子を確認することに加え、アルコール検知器を使用して酒気帯びの有無を確認することが義務づけられている。

 この検知器の吹き込み口にはマウスピースが使われるケースがあり、ドライバーが所有したりしているといい、その都度洗って繰り返し使っているが、衛生面に課題がある。

 宅配需要の増加により、ドライバーは人手不足になる中、新型コロナに感染すれば「運送崩壊」も招きかねない。こうしたことから毎回使い捨てできるストローに注目が集まったといい、4月の同社の検知器向けストローの売上高は、前年の3倍に伸長した。

 マウスピースが市販で200〜300円するのに対し、ストローは1本1円と安いのも利点。検知器のメーカーごとにさまざまなサイズを用意しているが、同社の強みは精度にもある。製造の過程でレーザーセンサーを使い、ストローの口径が注文サイズより0・1ミリ以上前後すれば不良品として廃棄している。

 ■飲料用は逆風

 一方、主力の飲料用は苦戦している。

 昨年5月の飲料用ストローの売り上げは、「タピオカミルクティー」の流行で専門店が増加したところに連休が重なった特需で、通常月間で1千万〜2千万円の売り上げのところ、過去最大の3千万円に達した。

 だが、今年は新型コロナ禍で外食産業の営業自粛が相次ぎ、5月は一転して過去最低の500万円に激減。工場の稼働を減少させるなど対応を余儀なくされている。

医療向け、工業向けのストローは同社では平成20年ごろから扱ってきており、「年間数%の割り合いで、ゆっくり成長してきた」(玉石さん)。同社の昨年度の売上高は約4・6億円だったが、これらの飲料用以外の売上高が、全体の3割を占めるまでになってきた。

 玉石さんは「飲料は厳しいが、医療、工業用が以前より大きく伸びてきている。人が使いやすい、人にやさしいストローを作っていきたい」と話している。

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