「同じ自治会なのに会費にばらつきがある」「市民しんぶんを配るのは義務なの?」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINEに、自治会(町内会)のお金や取り組みにまつわる疑問が複数寄せられた。自治会は身近な存在でありながら、地域によって規模や活動内容などは多様だ。取材を進めると、複雑な事情も見えてきた。

■値上げは脱会生む… 規約なく手探り

 「同じ自治会で会費にこんなに差があるなんて」
 京都市内の、ある自治会に入る男性は数年前、会費が記載された書類を見て驚いた。世帯や事業所によって、金額に大きなばらつきがあったからだ。自治会を構成する組の役員として、会費を集めることになって初めて知る事実だった。
 現在の自治会長らによると、会費はまず一般世帯と事業所で大きく分けられる。さらに世帯でも、集合住宅や戸建てなどで年間1200〜3千円と異なる。企業の場合は、事業規模や敷地面積といった観点から年間3千〜3万円を徴収しているという。
 だが、金額の根拠となる規約や会則は存在せず、この男性は「会費を集めるだけでも気が重いのに、金額のばらつきを指摘されないかひやひやした」と話す。
 自治会長らはいつこの仕組みになったのか不明とし、「金額の差や規約がないことへの問題意識は長年あったようだが、特にトラブルもなく先送りされてきた」とみる。その上で、「値上げをすれば脱会する人もいて、自治会活動に支障が出かねない。事業所に高い会費を払ってもらっているのも事実であり、まずは役員で話し合い、どうすればいいのか探っていきたい」と語る。

 京都市が2012年度、市内の自治会長らを対象に行ったアンケート調査(配布6590件、回答率56・5%)によると、町内会ごとに会費(月額)は大きく異なる。「301〜500円」が44・2%と最多で、「101〜300円」が29・8%で続く。「2001円以上」は1・2%、「無料(事業ごとに徴収)」も2・4%あった。マンション・アパート世帯や高齢者らを対象に会費を減免している団体もあるが、同じ町内会での会費の差について調査はしておらず、詳細は不明という。

 また、規約(会則)が「ある」との回答が66・9%だった一方、「ない」は29・0%だった。市地域自治推進室によると、自治会は住民の自由意志によって結成される任意団体で、規約や会則の策定は義務ではない。ただ、「ルールを明文化することで安心した活動につながる。会費についても不公平感が出ないようにし、規約で定めたり総会で議決したりして広く知らせることが望ましい」としている。
 一方、会費を統一した事例もある。中京区のある自治会では、マンションの建設計画が持ち上がった約25年前、新しい住民にも加入してもらうため、ばらつきの解消が必要だと判断。会の運営に支障が出ないよう、一律千円(月額)と最も高い額に合わせた。当時副会長だった女性は「『平等』を強く打ち出すことで速やかに決まった。世帯数が少なく、まとまりやすかった側面もある」と振り返る。

■募金、拒否できない雰囲気 あくまで寄付「使い道のPR必要」

 大山崎町に住む50代男性は「赤い羽根共同募金を半強制的に徴収されている」との不満を抱える。町内会役員が各戸を訪問して寄付を依頼する手法に、「額も1家庭300円と決まっている。町内会費を徴収すると同時に集めており、拒否できる感じではない」。
 京都府共同募金会によると、自治会や町内会の役員が家々を訪ねる方法は「戸別募金」と呼ぶ。府内では、市区町村の共同募金委員会から自治連合会などを通して、各自治会・町内会に依頼している、という。
 集まったお金は、街頭募金などの寄付とともに、市区町村での高齢者のサロン活動や障害者施設の送迎車両購入、保育所のプール改修といった福祉事業への助成に使われる。府内では、2018年度は約3億1400万円が集まった。
 赤い羽根共同募金は、事前に目標額を決めてから寄付を募る「計画募金」だが、同会は「各家庭にも寄付を強制している訳ではない」。一方、この男性のような声は会にも寄せられているといい、「地域のどんな事業に助成しているかといった使い道を、しっかりPRしたい」としている。

6/29(月) 18:51京都新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/db22d96ed7cc5d28d43ca53931e5306e7ff88e75?page=1
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