SARS、鳥インフル、新型コロナ……中国がいつも「感染源」になる理由

 インフルエンザウイルスの自然宿主はカモだと聞いたことがある人もいると思う。
カモは夏にシベリアの営巣湖沼で生活し、冬には渡り鳥として南に飛んでくる。
ウイルスはカモの大腸で増殖し、フンとともに湖沼の水に排泄される。でも、病原性はないから、カモも死なないし、他の鳥やヒトにうつることもない。

ところが、そのカモが南に飛来して、他の鳥や動物に感染すると、それら宿主の体で増殖しやすい変異が起きてウイルス感染が拡大する。

中国南部ではとくに生鳥市場のように、水鳥と陸鳥が生きたまま飼われている環境で、アヒルやガチョウなどの水鳥からウズラなどのキジ科の陸鳥に、次いで同じ科の鶏に感染する。

ウイルスに感染した鶏が養鶏場に持ち込まれ、少なくとも半年以上、鶏の間で受け継がれて症状のあらわれない不顕性感染伝播を繰り返し、そこで鶏の全身で激しく増殖する変異ウイルスが登場する。

鶏舎の鶏が全羽死亡して初めて高病原性鳥インフルエンザの発生が明らかになる。

新型コロナウイルスも、こういった伝播経路を経てヒトに適合するウイルスに変異したのだろう。だから、伝播経路の解明は大切なのだ。

 この伝播経路の解明に欠かせないのが、ブタの存在なんだ。鳥インフルエンザウイルスがブタに感染すると危険信号が灯る。
ブタはヒトと鳥の両方のインフルエンザウイルスに感染するレセプターを持っている。


レセプターとはいわば鍵穴のようなもので、ウイルスの持つ鍵に合致するような受容体だ。
ヒトと鳥のウイルスがブタに同時感染すると、呼吸器の細胞内で交雑してヒトに感染するようなウイルスが出現することがある。
これが遺伝子再集合と呼ばれる現象で、これまでヒトが経験したことのない亜型だと新型インフルエンザウイルスとなり、人間の世界でパンデミックを起こす。

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