コロナ禍で派遣会社の仕事がなくなり、1泊2500円のネットカフェを出た佐藤敏光さんは4月下旬、4時間半歩いて、NPO法人「TENOHASI」が東京・池袋の公園で行う生活相談にたどり着いた。炊き出しの弁当を受け取り「3週間ぶりの白飯です」と笑顔を見せた。財布の中身は62円だった。

 相談の翌週、NPO職員の同行で福祉事務所を訪ねた。生活保護につながり、アパートで一人暮らしを始めた。ハローワークを通じて非正規の仕事が決まり、今週から、朝5時前に起きて職場へ通っている。

 ひとりで都内の福祉事務所を訪ねたこともある。だが暗に相部屋の宿泊施設を勧められ、断った。「施設に詰め込まれた中で生活を立て直すのは難しい。あのとき公園で話さなかったら、今も路上で寝ていた」と佐藤さんは振り返る。「諦めず頑張ろう、とやる気になれるのは、落ち着いて物事を考えられる、安心できる居場所ができたから。家があるって、大切なことです」(川村直子)

朝日新聞 2020年7月1日 12時00分
https://www.asahi.com/articles/ASN6Z627ZN6TUQIP01C.html