米感染爆発なぜ起きた@再選にらみ「経済優先」 放置された「欧州からの渡航制限」

 新型コロナウイルスに襲われた米国は、世界最多の感染者と死者を出し、今も被害の拡大が続く。感染爆発が起きた経緯を振り返ると、トランプ政権が進めてきた自国第一主義の弊害や、人種間の格差が浮かび上がってきた。

 「とても難しい決断だったが、この決断で何万人もの命を救うことになった」。トランプ大統領が記者会見や選挙集会で繰り返し自画自賛しているのは、中国からの渡航制限に踏み切った決定だ。中国で新型コロナウイルス感染が拡大していることを受け、トランプ氏は1月31日、過去2週間以内に中国に滞在した外国人の入国を禁じる大統領令に署名した。

 当初、野党・民主党の幹部は、渡航制限の導入に批判的だった。大統領令に署名された翌日の2月1日。11月の大統領選でトランプ氏と戦う同党のバイデン前副大統領はツイッターに「ヒステリックで外国人恐怖症の対応ではなく、科学に基づく対応が必要だ」と投稿し、政権を批判した。

 だが、中国の感染者数はその後に急増し、渡航制限に関するトランプ氏の評価が上がると、バイデン氏も「正しい判断だった」と軌道修正を強いられた。トランプ氏は、「根強い反対にもかかわらず正しい判断をした」と主張する再選に向けた強力なカードを手に入れたかのように見えた。

 しかし、中国からの渡航制限は、米国での爆発的な感染拡大を食い止めなかった。多くの死者を出した東部ニューヨーク市と周辺地域を襲ったウイルスは、実際には中国からではなく、欧州から流入してきたためだ。

 米国で最初に感染が確認されたのは1月2…(以下有料版で,残り1919文字)


毎日新聞2020年7月1日 11時17分(最終更新 7月1日 11時44分)
https://mainichi.jp/articles/20200701/k00/00m/030/065000c