「努力も見てほしい」「どこまで耐えられるか」…コロナ批判標的「夜の街」歌舞伎町

 東京都内における新型コロナウイルスの新規感染者は107人だった。「夜の街」での感染が多く、小池百合子都知事は2日の記者会見で「新宿」などを名指しした上、「(飲食するのは)ぜひ注意してほしい」と強調した。批判の的になりつつある新宿・歌舞伎町の人たちは何を思うのか。

 「また客が減ってしまうかも」。歌舞伎町のホストの男性(24)はつぶやいた。新型コロナの影響で、来店しなくなった客も多い。「売れっ子ならしのげるが、自分は無理。本当に困るんです」

 コロナ対策のため、店内ではストローやマドラーを使い回さず、シャンパンコールも減らした。客の手に触れることも極力やめている。「そういう努力を少しは見てほしいが、今はホスト全体、歌舞伎町全体が駄目と言われる。理解されないことも分かってます」

 歌舞伎町を含む都内各地で串カツ屋を展開する飲食店チェーンの男性社長(43)は感染者が100人を超えたと知り、新宿の様子を見に来た。

 「人出は減っている。ホストクラブで感染者が出て『夜の歌舞伎町は危ない』と客に認識されてしまった」と残念がる。

 店舗では出入り口に消毒液を置き、従業員にはマスクを着けさせ、通常はテーブルに備え付けていたしょうゆ差しなども、客が代わるたびに客席から持ち出して消毒している。「予防策は徹底しているつもりだが……」

 歌舞伎町の店舗の売り上げは今が最底辺で、これ以上は下がらないという。ただ、今後、歌舞伎町だけでなく都内のほかのエリアの店に行く客も減ってしまうのではと危惧する。「そうなったら会社としてどこまで耐えられるか分からない」

 「感染対策をきちんと取っていた店まで影響が出るのがつらい」。新宿社交料理飲食業連合会の根本二郎会長(72)は強調する。

 根本さんによると、歌舞伎町全体では若者層の客足は減っていないが、中高年は歌舞伎町を避ける傾向にあるという。「対策を取っていない店もあるが、まじめにやっている店は多い。地域に根付いて長年経営している居酒屋やバーほどあおりを受けやすいのが現状だ」

 新宿区内の勤務先から千葉県船橋市の自宅に帰ろうとしていた会社員の男性(36)は緊急事態宣言解除後、歌舞伎町の居酒屋で何度か飲んだことがあると明かした。「今回のニュースを聞き、しばらくは控えます。これだけ感染者が増えているなら仕方ない。対策を取っている店なら大丈夫かもしれないが、万が一のことがあったら会社に迷惑がかかる。自宅の晩酌で我慢します」【斎藤文太郎、李英浩】

毎日新聞2020年7月2日 20時59分(最終更新 7月2日 21時13分)
https://mainichi.jp/articles/20200702/k00/00m/040/217000c