熊本県と鹿児島県の4日未明の記録的大雨は、気象庁の警報などの発表が夜から未明となり、住民の早期避難に十分につながらなかった。大雨時の避難は夜間だと危険を伴うため、日中に早めにすることが望ましいとされるが、今回のような突発的大雨の事前予測は「難しい」(気象庁)のが実情。早期避難を促す行政対応の難しさが浮き彫りになっている。

 今回の大雨で、気象庁が最大級の警戒を呼び掛ける大雨特別警報を出したのは4日午前4時50分。自治体が避難準備を促す目安となる大雨警報は、鹿児島県阿久根市など北部は3日午後8時前、被害の大きい熊本県では午後9時ごろだった。自治体が避難勧告を出す目安となる土砂災害警戒情報も鹿児島県で午後7時前、熊本県では午後10時前と、いずれも夜間だった。

 気象庁が臨時の記者会見を開いたのは4日午前6時。中本能久予報課長が「土砂災害警戒区域や浸水想定区域では何らかの災害が既に発生している可能性が極めて高い」とし「緊急に身の安全を確保してください」と呼び掛けた。

 ただこの時点で既に、住民が取るべき避難行動の必要性を示す大雨・洪水警戒レベルは危険度が最も高い「5」。記者から情報発信が遅いのではないかと問われると、中本氏は「特別警報が避難のトリガー(引き金)ではない。順番を経て避難のための呼び掛けはしている」と説明した。

 気象庁は近年、災害被害を軽減するため早めの避難を促しており、昨年7月に九州南部に梅雨前線が停滞した際には、緊急会見を開いて大雨特別警報の発表を事前に示唆し、危機感を強調していた。今回はそうした対応がなかったことについて、気象庁関係者は「昨年はある程度の降雨が続いていたので危険性が高いと判断した。今回はこんな急激に豪雨になるとは予測できなかった」と話す。 (森井徹)

西日本新聞 2020/7/5 6:00
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