厚生労働省が、感染症指定医療機関の体制改善を2017年に総務省から勧告され、全国調査を行ったにもかかわらず、現在まで結果をまとめていないことが分かった。新型コロナウイルス感染が拡大する前に指定医療機関の実態把握が十分にできず、対応遅れの一因となった。これまでにも厚労省が10年にまとめた感染症対策に関する提言が事実上、放置されていたことが判明している。感染症の大規模流行への準備不足が改めて浮き彫りになった。(村上一樹)
 総務省は16年、海外でのエボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)感染拡大を受け、感染症に対応できる医師や設備をそろえた約400の指定医療機関から44カ所を抽出調査した。約23%が病床数通りの患者受け入れが困難と回答。理由として、医療従事者不足や院内感染の可能性、患者受け入れ訓練の未実施などを挙げた。
 これを踏まえ、総務省は17年12月、行政機関政策評価法に基づき、厚労省に対し、指定医療機関の患者受け入れ可能病床数や医療従事者の実態把握を勧告。問題改善を求めた。
 勧告を受けた厚労省は、都道府県を通じ指定医療機関の実態調査を実施。18年中に結果を取りまとめ、問題点改善や制度、基準の見直しを検討する方針だったが、現在まで完了していない。同省の担当者は「都道府県からの回答で『病床不足』とあっても、その理由には個別の事情がある。精査するのに時間がかかっている」と説明した。
 加藤勝信厚労相は「必要な助言や支援、改めるべき点を指針にしていく必要がある。一日も早く結果を取りまとめたい」と国会で強調し、7月中を目標に調査結果をまとめる方針を示した。野党は「もっと早くまとめていれば、今回の混乱も少しは調整がついた」(立憲民主党の阿部知子衆院議員)と批判している。
 新型コロナの感染拡大では、受け入れ病床の不足が問題となった。院内感染の防止措置が不十分だった病院では、患者や医療従事者の集団感染が相次いで発生した。

東京新聞 2020年7月8日 06時00分
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