7/9(木) 7:39配信
毎日新聞

乗車の際にバスの扉に除菌スプレーを備えるなど感染防止対策に力を入れている=中泊町の中里観光で2020年7月8日午後5時8分、井川加菜美撮影

 県境をまたぐ移動の自粛が全面解除されて約3週間。新型コロナウイルスの影響で深刻な打撃を受けた観光施設や宿泊施設なども営業を再開し、徐々ににぎわいを取り戻しつつある。そんな中、コロナ禍で客が激減した青森県内のバス会社を約3カ月ぶりに訪ねると、ようやく客足が戻り始める一方で、今度はいかにして車内で「密」を避けるかという新たな課題に直面し、対応に苦慮していた。【井川加菜美】

【図解】接触確認アプリの使い方

 「本当に長い時間だった」。中泊町のバス運行会社「中里観光」の柏谷祐美子取締役がここ3カ月の状況を振り返り、つぶやいた。観光などの予約は3月ごろから全てキャンセルとなり、5月の売り上げは前年比85%減まで落ち込んだという。3月下旬に訪ねた時には車庫に大型バスがずらりと並び、行き場を失っていた。

 同社では、持続化給付金や町の独自施策などの支援策を利用しながら何とか事業を維持し、6月末ごろからようやく回復の兆しが見え始めたという。学校再開で遠足などの予約が入り始め、旅行会社では夏の観光ツアーの募集を再開する動きも出始めた。

 バスには検温器や除菌スプレーなどを備え、感染対策にも力を入れる。ただ、バスの車内はそもそも「密室」。柏谷さんは「客が多ければ多いほど、今度は『密』を避けるという観点では駄目ということになる」と頭を抱える。

 貸し切りバスの運賃は観光ツアーなどで参加人数が多いほど、1人当たりの金額が抑えられる仕組みになっている。「密」を避けるには1台あたりの乗車人数を抑えなければならないが、その場合、バスの数を増やすなど必要があり、1人あたりの運賃も高くなる。

 日本バス協会などでつくる「貸切バス旅行連絡会」が6月に策定したガイドラインでは、エアコンの活用によりバスの換気能力は十分としている。とはいえ、利用者の感染への警戒は強い。しかし、乗車人数を減らして運賃が上がれば、利用を敬遠されてしまうのではないかとの不安もある。

 柏谷さんは「今後、どういう集客の仕方やバスの活用があるのか想像がつかない。回復の時期はまだまだ見通せない」と話した。

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