慢性的な人手不足が続くなかで、看護大学の新設ラッシュがとまりません。2013年度
には新たに18大学で看護学科を新設。これによって全国で200を超す看護大学・学科
が誕生することになりました。
看護大学はもともと数が少なく、1989年度にはわずか11大学。入学者の数も500人程
度でした。ところが看護師不足を背景に、年々増加し続けて、2014年度にはなんと22
8大学にまで急増(2014年1月時点)。入学定員も2万人近くへとふくれあがりました

3校に1校は看護学科がある時代
日本の大学の数は、約750校。そのうち看護学科を持つ大学は228大学あるとすれば、
実に大学の3校に1校は看護学科を持っていることになります。少子化によって生徒が
集まらずに閉校となる大学がある中で、看護学部の突出した増加は異常事態ともいえ
ます。
看護学部が乱立するのは、少子化による大学経営の悪化も関係しています。当面、売
り手市場が続くだろう看護師の養成学科を設けることは、大学にとっては生徒募集の
大きなウリになるからです。
医療とまったく関係のない大学も
看護学科を新設する大学を大きく分けると、
▼医療系大学の中に新たに看護学科を新設
▼看護系短大などを4年制化
▼完全に新規の設置
となるようです。看護系の短大、専門学校が時代の流れに応じて4年制化を進めるケー
スもありますし、既存の看護大学の定員増もみられます。また、それまでは工業やビ
ジネス系など医療と関係のない学校法人が、新規に看護師養成に参入する事例もある
ようです。
看護大学の増加に伴って、看護師の国試合格者に占める大卒者の割合も、年々増加し
ています。2014年度の国試合格者に占める大卒者の割合は約3割にのぼります。
乱立で看護師の質は保てるか? 歯学部、薬学部では問題も
看護師の地位向上や待遇改善を考えた時、大卒看護師の増加は好ましい要因といえま
す。しかし、急激な定員増は、看護師の質の低下という深刻な問題もはらんでいます。

事実、歯科医師は早くから過剰が指摘され、1986年には入学定員削減の方向性を決
定しています。また歯科医師過剰による収益の悪化も課題です。同様に薬剤師も人
手不足から薬学部の新設ラッシュが続き、結果的に定員割れを起こす大学が出るな
ど、質の低下が問題視されています。
医学部については、医師の需給予測に基づく国の厳しい設置基準があるため、1979
年の琉球大学医学部設置以降、2016年に東北薬科大学医学部と国際医療福祉大学が
新設されました。w
医療の高度化に対応するため、4年間の看護教育を受ける看護師が増えることは、医
療全体にとってはプラスの面が多いでしょう。一方で、生徒集めのための急ごしらえ
の看護教育とならないように、教育の質の担保が求められています。