【7月19日 AFP】火星に宇宙探査機を着陸させる国家間の夏の闘いの火ぶたが間もなく切られる。アラブ首長国連邦(UAE)の「ホープ・プローブ(Hope Probe)」、中国の「天問1号(Tianwen-1)」、米国の「マーズ2020(Mars 2020)」の各ミッションだ。

3か国は、地球と火星の距離が最も近い5500万キロに近づく期間を利用しようとしている。火星までへの旅には約6か月かかる。いずれの国も、火星で新たに生命の痕跡を見つけ、いつか訪れるかもしれない人類着陸のための道筋をつけるためにミッションを実施する。

アラブ諸国初の惑星間ミッションとなるUAEのホープ・プローブは、7月20日に打ち上げられる。初の火星探査計画となる中国は、7月20日から7月25日までの間に小型の遠隔操作ローバー(探査車)を送り出す予定だ。

最も野心的なミッションは米国のマーズ2020で、打ち上げ予定日は7月30日だ。搭載されるローバー、「パーサビアランス(Perseverance、「忍耐」の意)」は火星の地表で1年(地球の約687日に相当)を過ごし、岩石や土壌のサンプルを採集し、地球に持ち帰るミッションが待っている。科学者らはそうしたサンプルが、火星に生息しているかもしれない生命体に関するヒントをもたらすと期待している。

1960年代以降、数十個の探査機が赤い惑星・火星に向けて出発した。大半は米国のものだったが、その多くが挫折するか着陸に失敗し、火星探査への意欲はしばらく勢いを失っていたが、潮目が変わったのは、10年ほど前、火星にかつて水が流れていたことが確認されてからだ。

フランス国立宇宙研究センター(CNES)の宇宙生物学者ミシェル・ビソ(Michel Viso)氏は、「(火星は)生命が過去に存在した可能性を発見できた唯一の惑星であり、知れば知るほど希望が生じている」とAFPに語った。

インドや欧州連合(EU)諸国も火星着陸を目指している。日本は2024年に火星の衛星「フォボス(Fobos)」に探査機を送る計画だ。

■UAEは2117年ごろに火星に人類のコロニー

月へのミッションと同様、火星探査にはさまざまな国が多額の投資を行ってきたが、ビソ氏によると、各国はそれぞれの強みを生かしたニッチな分野を見つけようとしている。

そうした中でも至高の目標は、人類の火星着陸だ。これまでのところ、米国だけが詳細な実現可能性研究を行っているが、目標達成には最短でも20年はかかるだろう。

1971年に打ち上げられたソ連の「マルス2号(Mars 2)」と「マルス3号(Mars 3)」以来、過去50年間の火星探査機ミッションはさまざまな成功を収めてきた。

2012年に到着した米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「キュリオシティー(Curiosity)」は、火星が微生物の生命を維持できる環境だったかどうかを究明するために設計されており、2018年に到着した無人探査機「インサイト(Insight)」と共に火星の地表で活動を続けている。

UAEは、さらに長いスパンで物事を考えている。石油産出国のUAEは、2117年ごろに火星に人類のコロニーを確立することを目標に、地球上に火星の大気状態を再現する「科学都市」を造る計画だ。

火星上で人類の生活を支えるには、物流面で多くの課題がある。まず現在の火星は、基本的に広大な氷の砂漠だ。また、宇宙放射線から火星を守っていた濃い大気は、約35億年前に失われてしまっている。

だが科学者らは今も、この惑星に代謝能力のある生命体が生息していたのかどうか、解明しようとしている。欧州宇宙機関(ESA)の火星探査計画「エクソマーズ(ExoMars)」の広報担当ホルヘ・バゴ(Jorge Vago)氏は、40億年前の火星表面の状態は水や濃い大気の存在など、「生命が出現したときの地球の状態に非常に近かった」と言う。

「パーサビアランス」は過去の火星探査ロボットの使命を引き継ぎ、古代に川の三角州だったとされる幅約45キロの未知のクレーター「イェゼロ(Jezero)」の探索を行う。約60か所の着陸候補地の中から選ばれたこのクレーターには、過去の微生物の痕跡や水、炭素が含まれる堆積岩が存在する可能性がある。

「パーサビアランス」は40セットのサンプルを収集し、うち30セットを地球に持ち帰る予定だ。分析結果が出るのは、UAEの火星移住計画ほど遠大ではないが、少なくとも10年かかるという。
(c)AFP/Juliette COLLEN

2020年7月19日 19:00
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