ジャイアントパンダを救う取り組みは、保護活動で最大の成功物語となっている。

数十年かけて保護区を整備したことで、ジャイアントパンダは絶滅の危機から脱した。

しかし最新の研究では、この保護活動が他の多くの動物に恩恵を与えている一方で、一部の動物に被害を及ぼしていることがわかってきた。

ジャイアントパンダ保護区の大半で、ヒョウ、ユキヒョウ、オオカミ、イヌ科のドールなどの姿がほぼ見えなくなっている。

これらの動物は伐採、密猟、病気によってすでに絶滅寸前に追いやられており、もし姿を消すことになれば、「生態系の大変化や崩壊すら」招きかねないと、中国の研究者らは話す。

ヒョウやオオカミのような動物がいなくなれば、シカや家畜が自由に歩き回る。すると、自然生息地が荒らされ、連鎖的にパンダを含む他の野生動物に影響が及ぶという。

自然保護活動家らはこれまで、人々を魅了するパンダの住む森を守ることは、同じ場所に生息する他の動物も同時に保護することになると考えていた。

ところが、一部の野生動物についてはそれが当てはまるものの、ヒョウやオオカミなどの大型の肉食動物に関しては、そうとは言えないことが見えてきた。

研究者チームは現在、パンダの住む生態系を保つには、他の主要な動物に大打撃が及ばない、より幅広い全体的なアプローチが必要だとしている。

このことは、「ジャイアントパンダに限らず他の野生生物にとっての生態系も復元力と持続力を増すため、決定的に求められている」と、今回の研究論文を共同執筆した北京大学の李晟博士は話した。

研究者らはそれを実践する方法として、密漁の取り締まりや、大型肉食動物の獲物となる動物の生息地の復元などを挙げている。

ジャイアントパンダは、保護活動が機能していることを示す、「生きる証拠」と考えられている。自然界での生息数は、長年の減少傾向から脱し、ついに増加に転じた。2016年には、絶滅の恐れのある種を挙げた「レッドリスト」で、「絶滅危惧種」から、より危険度が低い「危急種」に評価が引き上げられた。

ジャイアントパンダは、「アンブレラ種」とみなされている。アンブレラ種は、保護対象に選ばれた種であり、それを守ることで間接的に、他の野生動物の生態コミュニティーも守ることになるとされている。

https://www.bbc.com/japanese/53681819