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神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 外交(43-078)神戸新聞 1920.6.23 (大正9)
残虐無道悪魔の如きバルチザンの毒手にその最愛の妻子三名を殺戮され辛くも身を以て逃れたる尼港事件唯一の生還者本社を訪う

市中至る処の電柱に日本人鏖殺の貼紙
無線電信の破壊を手初めに空気は日々険悪を加えた 支那人等は悉く敵方

忘れもせぬ三月の二日尼港とハバロフスクの在留邦人が命の綱と頼む無線電信の設備を
パルチザンの為に破壊されたとの悲報が突として伝わった、
次ぎの日には市中到る所の電柱に「日本人を鏖殺せよ」との貼紙が見られた

砲声と銃声が入乱れ火と化した尼港満街
石油缶に火を点じてバルチザンの悪鬼が投込む私の家にも襲来した

其の当時の光景を追想するだに私は戦慄を禁じ得ない
黒竜江の河口から河に沿って長方形なる尼港市街は此の時河口の方から紅蓮の焔がメロメロと市街を西北に舐めつつあった、
何しろパルチザンの悪鬼共が手に手に石油缶を提げて屋内に投込つつ放火して歩くのだから火の手の早い事夥しい
パチパチと鳴る機関銃の音河口から打出す砲声
(河口には支那の巡洋艦及駆逐艦二隻碇泊し之がパルチザンに加担して市街に砲火を浴せかけた)