ミサイル防衛「専用艦」軸に 陸上イージス断念受け―概算要求へ政府検討
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時事 2020年09月04日07時16分
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 政府が導入を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として、
ミサイル防衛に特化した新たな護衛艦の建造を軸に検討を進めていることが3日分かった。
護衛艦に陸上イージスのレーダーやシステム一式を搭載し、ミサイル探知・迎撃機能を持たせる。
複数の政府・与党関係者が明らかにした。

 米国と契約済みの陸上イージスを転用することで、追加コストや同盟関係への悪影響を避ける狙い。
政府は関連経費を今月末の2021年度予算概算要求に盛り込みたい考えだ。
 これまで政府内では、迎撃ミサイルのブースターが民家などに落ちるのを避けるため、
地上にレーダー、海上に迎撃ミサイル発射装置を配置する分離案
▽海上施設に陸上イージスを置くメガフロート案
▽イージス艦増隻案―
の3案が浮上した。
 ただ、分離案では、
地上のレーダーが捉えたミサイル情報を海上の迎撃装置に衛星通信で伝える際にタイムラグが生じ、
迎撃に失敗する恐れがある。
メガフロート案は津波や天候、魚雷攻撃に脆弱(ぜいじゃく)で、
増隻案はコストや要員不足がネックとなるなど問題点があった。
 そこで考案されたのがミサイル防衛単機能艦。
イージス艦は戦闘機や潜水艦、ミサイルなどあらゆる攻撃に対処できる分、
1隻1200億〜2000億円と高額だが、
ミサイル防衛に機能を限定すれば「数百億円程度」(政府関係者)に抑えられるとの見方がある。
 一方、ミサイル防衛専門の護衛艦の運用は前例がなく初の試みとなる。
艦艇に載せるには陸上イージスの小型改修も必要で
「米側と技術的な精査をしている」(政府関係者)段階だ。
 運用に当たっては展開海域が気象や海の状況に左右される上、
一定期間ごとに要員交代や補給、修繕のための帰港も必要となる。
陸上イージス導入の決定打となった「24時間365日の常時継続監視」が困難との課題も残る。
 このため、政府は年末の21年度予算編成まで検討を続け、
概算要求では具体的な額を示さない「事項要求」にとどまる見通し。
当初の3案を排除せず、概算要求時点では選択肢を絞り込まない可能性もある。