集団改宗式で、手を振り上げる佐々井秀嶺。「私はヒンドゥーを捨てる」などと改宗者とともに唱えた
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仏教が生まれた土地ながら、人口の8割がヒンドゥー教徒というインド。最近はカースト制度の最下層にある人たちの中で、仏教に改宗する動きが目立っている。導くのが日本から来た老僧だ。(奈良部健、文中敬称略)

■「新しい人生が始まった」

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約900キロを鉄道でやってきた大学生ラワン・パル(23)は、「不可触民(ダリト)」と呼ばれてきた、カーストで最底辺層の出身。両親の希望で、改宗式にやってきた。「家を借りるのが難しく、ヒンドゥー教寺院に入ることも許されない。学校では教師から避けられ、警察からも嫌がらせ。犬のような扱いだった」

2007年に改宗して以来、毎年この地に来るナラヤン・アムテ(69)は「犬の方がまだいい」とさえ言う。「犬は村の井戸水を自由に飲める。でも、私たちは飲むことさえ許されなかった」。不可触民が井戸を使うと、不浄になると信じられているためだ。改宗後、生活が一変したわけではない。それでも、「新しい人生」が始まったことで希望が持てるようになったという。

以前、ヒンドゥー教の聖地バラナシ郊外にある不可触民の集落を訪ねたことを思い出した。トイレの汚物を素手で処理する職業の人たちで、安全な飲み水が手に入らず、のどが渇いた少女が汚水を飲んで亡くなった。住民のマルフ(80)は高位カーストの家などで汚物処理の仕事を50年以上やってきたが、仕事中に嘔吐が止まらず、「近づくな」と雇い主から言われた。「いくらお金を出されても、あんなことはしたくない。子供にも絶対にさせたくない」と話していた。

カーストは、紀元前にインド亜大陸を征服したアーリア人が先住民を肌の色で差別したのが始まりとされる。上からバラモン(僧侶)、クシャトリア(軍人)、バイシャ(商人)、シュードラ(隷属民)に分けられ、その下に不可触民が位置づけられる。さらに世襲の職業に基づくジャーティに細分化され、親の身分が子に引き継がれていく。

現世の人々は、前世の報いでいまの身分に生まれたので、その役割を果たすことで、来世の幸福がもたらされるという徹底した宿命観。これがヒンドゥー教の「浄と不浄」や「輪廻(りんね)」の考え方と深く結びついている。カーストによる差別は問題視され、憲法でも禁じられた。だが、人々の強い帰属意識はあまり変わっていない。

これに対し、カーストを批判してきた仏教は、イスラム教の勃興などで13世紀にインドからほぼ姿を消したとされる。それが近年は再び勢いを増している。

改宗式会場には、ブッダと並んで大きな肖像画が掲げられていた。カースト差別を禁じたインド憲法の起草者で、元法相のビームラオ・アンベードカルだ。人々は手を合わせて大声をあげた。「アンベードカル万歳!」

不可触民の出身だったアンベードカルは、猛勉強して英米に留学し、独立後のインドで法相にまで上りつめた。万人の平等を説く仏教の力によって差別から人々を解放しようと考え、1956年には約50万人の不可触民を率いて、集団で仏教に改宗させた。その大改宗式が行われたのが、ナーグプルだった。

いま、その遺志を受け継いで大改宗式を率いているのは僧侶の佐々井秀嶺(85)。インド国籍を取得し、インド仏教界の最高指導者の一人でもある。儀式の行われた会場では、壇上の真ん中に腰を下ろし、だみ声のヒンディー語で指示を飛ばしていた。佐々井の祝福を受けようと、手を合わせて多くの人々が近づいてくる。「第二のアンベードカルだ」と話す人もいた。

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2011年の国勢調査では、インドの総人口のうち、仏教徒は840万人、0.7%だったが、佐々井は自らの経験から、実際には5000万から1億人以上いる、とみている。ただ今年は新型コロナウイルスの影響で、改宗式を「開催できないだろう」と残念そうに語った。

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ヒンドゥー教では、ブッダもヒンドゥー神の化身の一つとされ、「仏教は一つの宗派」という認識がある。そのため、ヒンドゥー至上主義者の矛先は「侵略者の宗教」であるイスラム教やキリスト教に向かうことが多いが、佐々井は「モディ政権の発足後、改宗への風当たりが強くなった」と感じる。「改宗式はおもしろくないのだろう」

インドのイスラム教徒やキリスト教徒も、下位カーストからの改宗者が多いとされてきた。近年、ヒンドゥー至上主義者が強制的にヒンドゥー教に「再改宗」させる事件も散発する。(続きはソース)

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★1:2020/09/12(土) 16:20:41.19
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