わが国の女性専用車両は人権や正義の問題をクリアできていない
(NEWSポストセブン, 2018/03/19)
https://www.news-postseven.com/archives/20180319_659503.html

2月下旬に複数の首都圏鉄道で
女性専用車両に反対する男性たちが女性専用車両に乗り込み、
降ろそうとする女性客や駅員とトラブルになる事件が相次いだ。
わが国の女性専用車両はすでに定着したかに見えたが、
トラブルの火種は消えていないようだ。
“組織学者”として知られる同志社大学政策学部教授の太田肇氏が、
改めて女性専用車両の「正義」を問う。

(中略)

そして、より本質的な問題は
女性専用車両からの男性排除を社会が正当化することによって、
男女差別をなくそうという社会運動が理論的根拠を失い、
せっかく積み重ねてきた男女平等、男女共同参画推進の努力に
水を差すのではないかということだ。

なぜなら、「男性は痴漢をする可能性が高いから乗せない」というのは、
「女性は早期に退職する可能性が高いから責任ある仕事を与えない」
というのと基本的に同じ理屈であり、「統計的差別の論理」
そのものだからである。

当然ながら「女性は早期に退職する」と決めつけられないのと同様に、
「男性は痴漢をする」と決めつけられない。
実際、痴漢をする男性はごく、ごく一握りである。だからこそ、
統計的根拠があるからといって差別することは許されないのである。
長い歴史のなかで血のにじむような努力によって解消され、
あるいは解消されつつある数々の不条理な差別は、その多くが
「統計的差別の論理」に基づくものだということを忘れてはならない。

(以下略)