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即ち「血と火」の軍旗の下に、死を誓ふと云ふ誠に大理想、崇高な旗印を掲げ、百餘萬の組織を持ち、
思想的、宗教的に今日迄活動して来たのが救世軍である。
而してその組織網こそスパイの武器であったとも云へる。

このスパイの最高部は今獨逸空軍爆撃の洗禮を受けてゐる倫敦に本部を置き、
カーペンターといふ人を総督大将とし、カマンガムを参謀長となし、英國軍支部を始め、萬國本営所属の外局にあいる
九十七ヶ國及植民地の各救世軍本営を統治してゐる。

日本救世軍の内容に関して特に目に付くのは、その財政、宣傳関係を擔任してゐる者即ち内部の實権を握ってゐる者は
驚く勿れ英國人たる書記官リッチル少佐であった。
しかもその人の任務は直接倫敦の本営に於て行はれてゐたのであり、常にその微妙な組織體には自然疑點があったわけである。

尚倫敦にある救世軍本営の強味としては、各國に於ける幹部士官の外に、財産権の掌握である。
従って資金の調達運動に依って集めた世界の金は公然と本部に蒐集される。
美名の博愛善導は結果に於て経済謀略であると云へる。