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けれど堀婦長は毅然と言いました。
「あなたたちは黙って! 花江さんは助からない。花江さんの死を 無駄にしてはいけない!」
と声を荒げました。
大島看護婦が目を覚ましました。そして語ったのです。

「婦長。私たちは ソ連軍の病院に 看護婦として 頼まれて行った筈ですのに、
 あちらでは 看護婦の仕事をさせられているのではありません。
 行ったその日から、ソ連軍将校の慰みものにされてしまいました。

 半日たらずで 私たちは半狂乱になってしまいました。
 約束が違う!
 と泣いても叫んでも、ぶっても蹴っても、野獣のような相手に通じません。
 泣き疲れて寝入り、新しい相手にまた犯されて暴れ、その繰り返しが来る日も来る日も続いたのです。

 食事をした覚えもなく、何日目だったか、空腹に目を覚まし、枕元に置かれていた
 パンにかじりつき、そこではじめて事の重大さに気が付き・・

 それからひとりで泣きました。涙があとからあとから続き、自分の犯された体を見ては、また悔しくて泣きました。

 たったひとりの部屋で、母の名を呼び、どうせ届かないと知りながら、助けを求めて叫び続けました。
 そしてどんなにしても、どうにもならないことがわかってきたのです。
 やがておぼろげながら、一緒に来た二人も同じようにされていることがわかりました。