>>188
 ほとんど毎晩のように三人か四人の赤毛の大男にもてあそばれながら、身の不運に泣きました。
 何度も逃げようとして、その都度、手ひどい仕打ちにあい、どうにもならないことがわかりました。

 記憶が次第に薄れ、時の経過も定かではなくなった頃、赤毛の鬼たちの言動で、
 第八病院の看護婦の同僚たちが次々と送られてきていることを知って、無性に腹が立ち、同時に我にかえりました。

 これは大変なことになる。 なんとかしなければ、みんなが赤鬼の生贄になる。
 そんなことを許してはならない。 そうだ、たとえ殺されても、絶対に逃げ帰って婦長さんにひとこと知らせなければ・・・

 赤鬼に汚された体にも命にもいまさら何の未練もありませんでした。

 私は二重三重の歩哨の目を逃れ、鉄条網の下を、
鉄の針で服が破れ、肉が引き裂かれる痛みを感じながら潜り抜けて、逃げました。

 後ろでソ連兵の叫び声と銃の音を聞きながら、無我夢中で逃げてきました。

 婦長さん。 もう、人を送ってはなりません・・・・」

そこまで話して、島花江看護婦は、ときれました。

なんという強靭な意志の持ち主なのでしょう。
蜂の巣のようにされながら、の事実を伝えようとする一心だけで、
まさに使命感だけで、女はここまで逃れてきたのです。