民主国家においては、あらゆる国家機関に民主的な基礎が求められるとすれば、司法権を
行使する裁判官の選任についても、民主的な方法(公選制など)が採用されることになる。

しかしながら、司法の使命は、立法や行政と異なり、多数決による支配ではなく、公平な立場において、
法に基づく調整機能を果たすことにあるとすれば、司法の民主化が危険であることを否定できない。

そこで、後者の観点を踏まえると、裁判官は、民主的な方法でなく、一定の資格を有し、
適任であると認められる者のうちから、選任されるという任命制が採られることになる。

もっとも、任命制を採る場合でも、その運用次第で政治性が生じることもあり、
それはアメリカにおける連邦最高裁判所の裁判官を選任する過程に顕著であって、
その結果、裁判官にも、ある程度の政治的な立場が要求されることになっている。