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トビイロウンカ被害深刻
例年の120倍、収穫早める農家も

水稲を枯らす害虫「トビイロウンカ」の被害が深刻だ。県内の飛来量は例年の約120倍で、県農業共済組合によると、被害面積は9月27日現在で約2248ヘクタールと、過去最悪ペースで推移。農家は予定より早めに収穫するなど対応に追われている。

 トビイロウンカは中国大陸から偏西風に乗って国内に飛来し、イネの株に寄生し汁を吸って枯らす「坪枯れ」を引き起こす。気温の上昇で増殖するとされている。

 県内では例年より早い6月26日に初飛来が確認され、県が7月16日に注意報を発令。8月3日には警報を出して、生産者に早めの防除を呼び掛けた。同組合によると、夏場の少雨と高温が被害を増大させた可能性があるという。

 同組合によると、一番被害が大きかったのは下関市で約630ヘクタール。組合には「壊滅的で収穫できる状況にない」などと農家から悲痛な声が寄せられている。

 中国四国農政局は9月30日、県内の2020年産水稲の作柄概況を発表。同15日現在の作況指数は83で「不良」を見込み、過去最低だった。トビイロウンカと塩害を主な要因とした。

 山口市南部の鋳銭司でもトビイロウンカが農家を悩ませる。兼行啓治さん(72)は坪枯れが発生したため、予定より3日早めて収穫することに。成熟させたい気持ちを抑えて、コンバインに乗り込んだ。「収穫を早めると実入りが悪くなり、質が下がるのが心配。今年の発生は異常だ」と肩を落とした。

 近くの本広勝利さん(81)は、薬剤を行き渡らせるため、無人ヘリコプターと手作業で農薬を散布した。「高齢になると農薬の散布は大変。坪枯れしたイネはうまく刈ることができず、コンバインの故障につながる恐れもある。行政から支援があるとありがたい」と訴えた。県農業振興課の担当者は「早めの収穫や防除を引き続き指導していきたい」とした。

2020年10月03日 06時00分