佐藤優
2002年5月14日に私は逮捕されて東京拘置所の独房に512日間勾留された。

さて、日本の刑事事件では、被告人が否認していると長期間勾留されるというのが常識だ。
罪証隠滅と逃亡のおそれがあるというのが、長期勾留の理由だった。
しかし、検察庁はすでに関係の証拠物を押収しているし、保釈に際しては、裁判で証人になる可能性のある人との接触が禁止される。
筆者は、逃亡するつもりも罪証を隠滅する意思もまったくなかった。
しかし、検察庁も裁判所も聞く耳を持たなかった。
自白して罪を認めない限り、被告人を保釈すれば、罪証を隠滅し、逃亡するに決まっているという偏見を検察庁も裁判所も持っていたとしか思えない。
ちなみに日本の刑事裁判では、起訴されると99.9%が有罪になる。
現実的に考えるならば無罪になることはできないのだから、犯していない罪であっても自白して早く裁判を終わらせてしまいたいという気持ちに被告人は傾く。
日本では「人質司法」が行われているというのが現実だ。