「実績を上げたかった」

 目標達成のため、不正な取り締まりを重ねた警部補は、こう供述しているという。

 スピード違反の取り締まりで速度超過を捏造し、実際には違反していない運転手を取り締まったとして、北海道警は12日、交通機動隊の警部補、吉本潤容疑者(58)を証拠偽造と虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで逮捕した。

 吉本容疑者は昨年8月〜今年5月にかけ、速度違反の取り締まりの際、速度測定結果記録紙を偽造した上、交通事件原票を作成して上司に提出していた。

 吉本容疑者の捏造は、ちょっと手が込んでいる。

 本来なら交通違反の取り締まりは、停車中のパトカーから速度超過が疑われる車両にレーザーを複数回、照射して速度を計測する。スキャンレーザー式車両速度計測装置を搭載しているパトカーは、走行中、電信柱など静止物にレーザーを照射すると、パトカー自体の速度が記録される。吉本容疑者はそこに目をつけた。

「パトカーを路肩に止め、ある程度スピードを出している車両が通りかかるのを待ち構え、制限速度を超えるスピードで追尾しながら、前方車両ではなく電柱や住宅の壁にレーザーを照射させていた。その後、狙った車両に停車を求め、嘘の速度を記録用紙に印字して、交通反則切符を切っていた。狙われた車両もそれなりのスピードを出していたので、不正には気づかなかったようです」(捜査事情通)

 吉本容疑者が関与していたとみられる不正取り締まりは計47件におよび、道警は運転手の違反点数を取り消し、反則金を返還する予定だ。免許の取り消しや停止処分を受けた運転手はいないが、数人がゴールド免許からブルー免許になったという。今年6月、同僚が上司に報告して不正が発覚。パトカーに同乗していた部下3人も吉本容疑者の捏造を認識していた可能性がある。吉本容疑者は小隊長を務めていて、摘発件数を増やし、機動隊内での評価を上げようとしていた。

■相次ぐ交通違反事件の不祥事

 道警ではここ数年、この手のでっち上げや隠蔽が後を絶たない。

 2015年には20代巡査長が、実在する人物の名前を勝手に使い、シートベルト装着義務違反切符を40件作成して逮捕され、「取り扱いが少なく、交通違反を検挙しないと格好がつかないと思った」と供述。同年には交通違反事件の実況見分調書の捏造に関わったとして、33人の警察官が書類送検されている。

 16年には、処理が済んでいない道交法違反の書類を自宅に隠したとして、50代警部補と40代巡査部長が書類送検。18年には30代巡査部長と20代巡査長が「仕事を早く終わらせたい」という理由で共謀し、信号無視事件の報告書に車と停止線の距離に関する虚偽の内容を記載し、書類送検される不祥事を起こしている。

 北海道民はもっと怒ったほうがいい。

2020年10月16日
https://www.excite.co.jp/news/article/Gendai_675165/