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2020.10.07 村上陽一郎
上智大学理工学部、東京大学教養学部、同学先端科学技術研究センター、
国際基督教大学、東京理科大学、ウィーン工科大学などを経て、東洋英和女学院大学学長で現役を退く。
東大、ICU名誉教授。専攻は科学史・科学哲学・科学社会学。

... 今回、菅首相が主張する、日本学術会議は国立の機関として、首相・内閣府の管轄下にあること、
その会員は(特別)公務員としての立場にあること、その任命の権限は内閣・首相にあること、
といった内容は現行の規定に従えば、まず疑問の余地のないところです。

実際、今回の件で、自分の学問の自由を奪われた人は、一人もいません。
強いていえば、任命を見送られた方の中で、学術会議会員の資格の欲しかった方は、
希望の就職の機会を奪われたことになるわけですが、それも就職の際には、常に起こり得ることと言わねばなりませんし、
どんな推薦があっても採用されないという人は出るものです。
採用されなかった人に、その理由を細々と論って説明する義務は、選考側には通常は無いはずではないでしょうか。

そうした事情を抜きにして「学問の自由」を訴えるのは、完全に問題のすり替えであって、
学問の自由の立場からすれば、却ってその矮小化につながる恐れなしとしません。