京都市の和紙加工会社のパート社員だった女性(57)が、新型コロナウイルスの影響で休業させられた末、雇用契約を解消されたのは不当だとして、会社に地位確認などを求める訴訟を京都地裁に起こした。同社は従業員に支払う休業手当の全額を国から雇用調整助成金として受け取っていたといい、女性側は「休業させたまま雇用を続けても会社に不利益は生じなかった。合理性のない雇い止めだ」と主張している。

 女性の代理人の中村和雄弁護士によると、雇用調整助成金を受け取った企業の雇い止めの是非を争う訴訟は珍しいという。26日にあった第1回口頭弁論で、会社側は請求棄却を求めた。

 訴状によると、女性は2018年8月に1年契約で採用され、週3日、和紙の加工作業などをしていた。期間満了後も更新手続きをせずに雇用が継続された。新型コロナの緊急事態宣言を受け、20年4月に正社員の一部や他のパート社員2人とともに休業を命じられ、約2カ月半後、採用から丸2年となる8月6日付で契約を解消すると通知された。他のパート社員は9月に契約更新されたという。

 26日に京都市で記者会見した女性は「収入源がなく生活に困っている」と訴え、中村弁護士は「助成金は、経営が苦しい中でも雇い止めが起きないように作られた制度。会社は制度の意義を踏みにじっている」と批判した。一方、会社側は毎日新聞の取材に「有期契約の期間満了に伴う、合法的な契約終了だ」と説明した。【添島香苗】

毎日新聞 2020年10月26日 20時17分(最終更新 10月26日 20時17分)
https://mainichi.jp/articles/20201026/k00/00m/040/257000c