香川県まんのう町にある慈泉寺の僧侶、片岡妙晶=本名、千晶=さん(25)は、法話を通じて仏教の教えを伝える「布教使」として活動している。居酒屋やカフェでの仏教講座、SNSでの発信にも取り組む妙晶さんに、若い世代から見た仏教について聞いた。

 ――お寺の娘として生まれたんですね

 小学6年生から中学時代まではずっと不登校でした。養護学校高等部を卒業後、京都の美術を学ぶ短大に進みました。絵が好きだったんです。兄がお寺を継ぐと決まっていたので、親からも僧になれとは言われませんでした。

 ――仏門に入るきっかけは

 最初は伝統工芸の職人になろうと思ったのですが、職人は先人の哲学を受け継いでいることに気付いたんです。お坊さんも仏教の哲学を受け継ぐという意味では職人の一つかもしれない、と考えました。

 先代の住職だった祖父が好きだったこともあります。不登校だった私に「せっかく休んでいるのだから、遊ばないのはもったいない」と声をかけてくれました。周囲とは全く違う反応でした。世間体や常識に合わせるのではなく、相手にとって何が一番よいかを伝えられる、そんな人になりたいと思ったんです。

 ――伝統的な仏教の世界で、若い女性の僧侶は受け入れられていますか

 参拝者は若い人がいるのはうれしいといってくれます。私自身は、今の世の中は高齢者に冷たいと感じています。年をとって幸せになれない世の中は、若者にとっても希望がもてません。そう伝えられるのも若いからこそだと思います。

 ――得意のイラストを使った法話やSNSでの発信、企業とのコラボレーションもしているとか

 イラストは法話をわかりやすく聞いてもらおうと使っています。SNSで発信すれば、仏教に関心のない人にも見つけてもらえます。仏教をもっと身近なものにしたいんです。今、広島のお茶屋さんと、お茶を通じて日本人の心のあり方を伝える取り組みに僧侶としてかかわっています。

 ――新型コロナウイルス禍をどう考えますか

 大変な思いをしている方がたくさんいます。一方、人と簡単に会えない不便さから、いつでも人と会えることの有り難さに気付きます。当たり前になっていたこと、忘れかけていたことを思い出し、人間性を取り戻すきっかけにしたい。

 ――法話で特に強調している点は何ですか

 1人の無力さと協力することの大切さです。文明の発達で、ほかの人と力を合わせる機会が減っています。コミュニケーション力や人間性を、仏教を通してみんなが平等に身に付けられるようになればいい。

 ――今後はどんな活動に取り組みますか

 布教使が職業として認識され、一般の人が志すようにしたいと考えています。仏教の教えを伝えるには、世の中の生きづらさに気付かなければなりません。生きづらさを知っているからこそ、私には僧侶があっていると思うのです。

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