政府の旅行需要喚起策「GoToトラベル」事業を巡り、中小の旅行会社の間に「恩恵が大手に偏っている」との批判が強まっている。利便性の高い大手旅行会社のサイトや宿泊予約サイトを通じて予約されることが多く、中小の旅行会社の利用が伸び悩んでいるためだ。また、規模の小さい旅行会社にとって収益の柱となっている団体旅行が回復しないことも影響している。「中小の我々は必要とされていないのか」。関係者からは嘆きの声が聞こえてくる。

 「期待していたが駄目だった」。東京都杉並区の旅行会社「飛鳥旅行」の村山吉三郎社長(68)は肩を落とす。

 同社は大学生の合宿や社員旅行の手配を得意としてきた。新型コロナウイルスの感染拡大で4、5月は休業を余儀なくされ、「第2波」に見舞われた8月は営業しても予約が一件も入らなかった。

 10月から東京都が「GoTo」の対象となり、事態の好転を目指したが、ネット予約は入らず、売れたのは店頭にチラシを置いた大手旅行会社のパック商品ばかり。いずれも手数料はわずかで利ざやは薄い。

 それでも、新型コロナで壊滅的な打撃を受けた同社にとって、そうした手数料は貴重なものだった。「GoTo」は各旅行会社の過去の売り上げなどを基に予算枠が決められており、飛鳥旅行は1200万円を受けていた。同社はその拡充を求めた。

 しかし、「GoTo」事務局の対応は冷たかった。…残り1171文字(全文1752文字)

毎日新聞2020年11月11日 07時30分(最終更新 11月11日 08時12分)
https://mainichi.jp/articles/20201110/k00/00m/040/104000c