ジャーナリストの島沢優子さんが最新の教育事情を取材してお伝えする「子育てアップデート〜子どもを伸ばす親の条件」。今回のテーマは「公立小中学校のトイレ」の話。子育てや教育と実は大きくかかわる問題なのだ。和式トイレの長短も含めて取材、考察する。

「小中学校に和式トイレが多い話、ご興味ありませんか?」
そんな質問を10月、2人の編集者から同時にいただいた。

聞けば、文部科学省が9月30日、「公立学校施設のトイレ状況について」の調査結果を発表したという。今年9月1日時点の公立小中学校におけるトイレの便器は、洋便器が57.0%、和便器が43.0%。洋便器率は4年前の前回調査の結果である43.3%から13.7ポイント増加しているものの「洋式トイレはまだ50%台なんですよ!」と編集者の鼻息は荒い。「子どもたちがかわいそう」だと言うのだ。

うむむ。そういえば、大人の私でも身に覚えがある。
「トイレ、トイレ」と小走りで駆け込んだとき、洋式が埋まっていて和式しか空いていない! となったとき。あのときの絶望感を思い出す。
ちょ、ちょっと、なんで和式なのよ、チッ、と舌打ちしているではないか。

さらに、この方より先に連絡してこられた女性編集者は「和式にこだわるのは、学校側の根性論に基づいたものではないか。例えば、ブラック部活みたいなものが」と仮説を立てていた。ブラック部活なら島沢だろうということで、トイレの話なのに、部活がらみを想定されて私に話をよこしたという。

和式トイレ→根性論→ブラック部活の移行に驚かされるが、そう考えてしまうくらい「学校=子どもを圧迫する」というイメージは根深いのだろう。

和式トイレは教育的配慮?

とはいえ、そこについてすぐに否定した。

「単なる予算不足じゃないのかなあ。学校は耐震工事にエアコン設置とインフラ整備に追われてるよね。それがようやく終わったと思ったら、コロナの影響でオンライン環境の整備でしょ? トイレは現存の和式を子どもたちが使えているから、洋式化案はどんどん流されていくんじゃないかな」

ええ、トイレだけに! とボケるのを我慢しつつ持論を述べてはみたが、現場の声を聴いてみないとわからない。すぐに知り合いの小学校教諭数人に連絡したら、次々と返事が届いた。

まずは都内某市立小学校の男性教員(30代)から。

「東京都ですが23区ではないからか、子どものトイレは20数年前の開校当時のまま、男子トイレ、女子トイレともに洋式便器は1個だけであとはすべて和式です。子どもたちは家では洋式なので、当然そのたったひとつの洋式便器を奪い合います。早く変えてほしくて、教員からも毎年要望は出していますがまったく変わる気配はありません」

千葉県の教員(50代)も、似た状況だという。

「十数年前から、毎年4校ずつ洋式化工事をすると聞いていますが、まだうちの学校の番ではないみたいで……。ただ、洋式化しても、さまざまな事情を抱えた子に対応できるようにするため、和式トイレは必ずひとつは設置するそうです。学校以外の公共施設に和式が多いので、教育的配慮だと聞いています」

ちなみに1年生のほとんどの子が和式トイレは初体験なので、入学するとすぐ和式トイレの使い方を指導する。足の置く位置、パンツの下げ方、上げ方、お尻の拭き方などなど細かく指導するそうだ。

この方も「教育行政はなるべく早く洋式トイレをたくさん普及したいけれど、経費や工事期間などの関係でなかなか進まないのが現状でしょう。ほかに、エアコンやパソコンなどでお金がかかりますから。これは全国共通だと思います」と私と同意見だった。

和式トイレがストレスになっている
 
四国地方に住む40代の女性教員が、和式トイレのデメリットを話してくれた。

「和式トイレは、不衛生になりやすいです。小学生は和式の使い方を理解したとしても、上手く使えない子が多くて散らかります。日本では掃除を子どもがしますよね。小学生では和式トイレをきれいに掃除できません。それと、何より明確なのは、高学年になるにつれて子どもが(和式トイレを)嫌がっているということです」

つまり、和式トイレは子どもにとってストレスなのだ。

以下ソース先で

11/16(月) 14:31 現代ビジネス
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f0250c1e8faef2f80803c155f52692662cf731c?page=1