【ワシントン=河浪武史】米大統領選で当選を確実にしたジョー・バイデン前副大統領(民主)は16日、トランプ政権で混迷した通商政策を3原則に基づいて見直すと表明した。同氏は記者会見で「中国に対抗する必要がある」と明言。まず国内投資で米製造業を立て直し、その後に労働・環境対策を重視して通商交渉に臨む。制裁関税などの「懲罰的な手段は採用しない」とも述べた。

バイデン氏は地元の米東部デラウェア州で新型コロナウイルス対策や経済問題を巡って演説し、その後の記者会見で通商政策について述べた。

15日には日中など15カ国が東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名し、米国は通商政策の見直しが急務だ。バイデン氏は会見で、RCEPの影響を問われて「中国に対抗して(国際貿易の)ルールをつくるには、ほかの民主主義国家と連携する必要がある」と明言した。

バイデン氏は環太平洋経済連携協定(TPP)には言及しなかったが、オバマ前大統領は「TPPがなければ中国がアジアでルールを確立し、米企業は締め出される」と繰り返していた経緯がある。バイデン体制でも「対中国」を軸足に、アジアでの貿易・投資ルールづくりに再び動き出す可能性がある。

ただ、バイデン氏は第1の原則として「まずは国内投資で米労働者の競争力を立て直す」と主張した。具体策として、再生エネルギーやIT(情報技術)など先端分野を対象に連邦政府が3000億ドル(約31兆円)を投じ、300万人分の雇用を生み出すとした。新型コロナウイルス禍で失業率が高止まりしており、貿易交渉の前段階として、国内の雇用再生を優先する。

2020/11/17 7:31 (2020/11/17 8:24更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66303610X11C20A1000000/