米国の対新型コロナウイルス戦略はワクチンと治療法に頼る一方で、社会的距離(ソーシャルディスタンス)の確保やマスク着用、
全国的な検査体制拡充を重視していないため、新型コロナ禍を克服して通常の市民生活に戻るのが遅れそうだ。

米政権は新型コロナワクチン開発に100億ドル(約1兆400億円)余りを投じると公約しているが、
米世論調査会社ギャラップのリポートによれば、無料でワクチン接種可能になったとしても米国民の約半数が接種を受けないと回答している。

英調査分析会社エアフィニティによると、ワクチン計画が未達の場合、新型コロナをめぐる米国の苦境は2023年まで続く可能性があるという。

さらに冬が近づき、屋内活動が増えるにつれて新型コロナ感染が加速している。
10月28日までの1週間では32州と首都ワシントンで入院患者数は少なくとも10%増加した。

新型コロナ危機収束までの道のりは長く険しいものになりそうだ。

ワクチンが実用化されれば、慢性疾患を持つ感染者の死者は当初減る見通し。
しかし世界保健機関(WHO)が集団免疫の獲得に必要と指摘するワクチン接種率60〜70%の達成には、
物流や生産、啓蒙(けいもう)活動の各面で長く困難な取り組みを強いられる見込みだ。

公衆衛生専門家は、新型コロナの封じ込めにはワクチンだけでなく、マスクや社会的距離、検査拡充、新しい有効な治療法がなお必要だと指摘する。

ランス国立保健医学研究所(INSERM)の研究調査ディレクターで、WHOで事務局長補佐を務めた経歴を持つマリーポール・キーニー氏は
「ワクチンは魔法のつえではない。たとえ有効性があったとしても即座に解決はできない」と語った。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/201119/mcb2011190639012-n1.htm
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