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和牛 コロナ打撃から回復 相場前年超え 「GоTо」消費刺激 懸念は在庫、再拡大

和牛枝肉の月別平均価格が、新型コロナウイルス禍で大幅に落ち込んだ4月以降初めて前年を上回って推移している。食肉業者の在庫保管料などを支援する国の事業や「GoTo」キャンペーンなどが奏功し、一定の引き合いが出た。ただ、感染再拡大でGoToは見直し。在庫など懸念材料も多く、最需要期の12月の動向には不透明感が漂う。好調なスーパー向けの販促が相場展開の鍵となりそうだ。
 
 建値となる東京食肉市場の11月(20日時点)の枝肉加重平均価格(A4、去勢)は、前年同月比3・3%高の1キロ2524円。大阪や仙台、福岡など各地の市場も同様に前年を上回って推移する。

 市場関係者は「GoToキャンペーンを活用した消費の動きで、高価格帯の飲食店やホテルなどから和牛への引き合いがあった」とみる。国の和牛肉保管在庫支援緊急対策事業で、年末向けの手当てを前倒しする動きも重なった。

 和牛相場は、新型コロナ禍で外食や輸出需要が激減し、4月には前年比3割安にまで落ち込んだものの、5月以降上向き10月には前年水準まで戻していた。昨年は年末の最需要期に異例の下げ展開となるなど低調の兆しが出たため、前年の価格を上回るのは2019年6月以来1年5カ月ぶりだ。

 例年、12月の最需要期に向けて相場は上向くが今後の動向は不透明だ。政府は21日にGoToの運用見直しを決定。農畜産業振興機構によると、直近9月末の国産牛肉の在庫は1万738トンと、前年を2割上回る。「滞留している高級部位の冷凍在庫が放出されれば、相場の下押し要因になる」(市場関係者)との見方も出ている。

 今後の相場展開には、好調な内食需要で販売を伸ばすスーパーの動きが大きく影響しそうだ。

 同機構の20年度下半期(20年10月〜21年3月)の食肉販売動向調査によると、同期間の販売見通しについて、スーパーの8割が和牛の仕入れを前年より「増やす」と回答。11月に入り、和牛の相場上昇で交雑牛(F1)にシフトする動きも見られるが、「スーパーからの引き合いはおおむね堅調」(大手食肉メーカー)という。

 感染再拡大を受け、都内の流通業者は「自宅で年末年始を過ごす人向けの販促が重要」と指摘する。

2020年11月23日 日本農業新聞