全国屈指の複合MICE(大型会議場や展示場などの交流拠点施設)であるパシフィコ横浜を抱える横浜市が、大規模イベントや会議などの感染対策をまとめた独自のガイドライン(指針)を策定した。会議などを主催する団体に対する助成制度も設けており、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ開催件数を再び増やすために本腰を入れ始めた。【樋口淳也】

 市内には、横浜アリーナやパシフィコ横浜、4月に開業したパシフィコ横浜「ノース」など、大規模な催しを開催できる日本有数のMICEが複数ある。2019年度末時点で、20年度に予定していた大型国際会議(参加者数1000人以上)の開催件数が過去最多の10件となるなど集客状況は好調で、市は周辺ホテルの利用など地域経済の活性化や、市のプロモーションへの好影響を期待して積極的な広報などを展開してきた。

 ところが、新型コロナの感染拡大で横浜アリーナやパシフィコ横浜で催しの中止・延期が相次いだ。市によると、小規模な催しも含め、その数は市の集計で約540件(10月29日時点)に上った。市内の主要ホテルの平均稼働率は緊急事態宣言中の4〜5月は2割に落ち込んだ。

 市はこうした状況を打開しようと、国によるイベント制限緩和をにらみながら、準備を進めてきた。10月には独自の「安全・安心な横浜MICEガイドライン」を策定。横浜市立大学付属病院の加藤英明・感染制御部長が監修し、会場での3密(密閉・密集・密接)回避策や、運営側のスタッフの感染防止策などについて写真入りで説明している。

 同月中旬にMICE関係者向けのセミナーを開催。指針を監修した加藤氏が講演し「マスクはちゃんとつけて」などと写真入りの資料を使って呼びかけた。指針では「参加者側の自己管理、感染症対策が大切な要素」と、催しに参加する人の事前の対策の必要性も訴える。

 また、横浜観光コンベンション・ビューローが、市内で催しを開催する団体や企業に対し、一定の条件を満たせば助成金を支給する仕組みも導入。会場費や感染予防対策費など催しに伴う経費のうち、横浜市内の事業者を利用した分について最大1000万円(助成対象経費の3分の2が上限)を補助するもので、多くの申し込みがあり、受け付けを終了した。市は9月の補正予算で助成金事業費4億円を計上した。

 こうした対策に加え、オンライン会議などとの「ハイブリッド型」も増え、市内のMICEでは、徐々に大規模な催しが開催され始めた。11月3〜7日には、パシフィコ横浜ノースで開業後初めての大型会議となる「2020年JCI世界会議 横浜大会」を実施。最終日には菅義偉首相が講演するなど、多くの参加者が集まった。

 パシフィコ横浜でイベントを企画する団体の広報担当者は「感染が再び拡大しつつあり心配だが、できる対策は全てとって開催件数を増やしたい」と話す。

毎日新聞2020年12月3日 06時00分(最終更新 12月3日 06時00分)
https://mainichi.jp/articles/20201202/k00/00m/040/264000c