「ウィズコロナ」時代の移動手段として車の人気が高まったことを追い風に、中古車が長野県内でも売り上げを伸ばしている。緊急事態宣言が解除された5月下旬以降、地方移住者の増加や「密」を避けた交通手段として需要が高まったことなどが背景にあるとみられる。中古車販売大手「ガリバー」の店舗を訪問して好調の理由を探った。【坂根真理】

 「ここまで売れるとは思っていませんでした。車は必要不可欠な移動手段。(コロナ禍でも)ニーズは衰えないですね」。松本市中心部「ガリバー南松本店」(同市双葉)の大倉康弘店長は話す。

 ガリバーを運営するIDOM(東京)によると、国内直営店の3〜8月の販売台数は7万590台(前年同期比4・1%増)で、7月1万2383台(同4・3%増)▽8月1万2654台(同14%増)▽9月1万449台(同24%減)▽10月1万2995台(同28・7%増)。9月は、昨年10月の消費増税直前の駆け込み需要があったため前年より減少したが、それ以外は軒並み前年から増加した。緊急事態宣言が解除された5月下旬以降は、「想定以上の回復だった」としている。

 新型コロナ感染者が少ない地方への移住者が増えたことに伴い、移動手段として欠かせない車のニーズが増加したことが要因の一つ。大倉店長は「息子や娘を都会に出している親御さんがコロナ感染を心配して、地元に呼び戻して就職してもらい、車が必要になったという話もよく聞きました」と説明する。

 「密」を避ける交通手段としての人気に加えて「会社の業績が落ちてボーナスが出るかどうか分からない」「仕事が続けられるかどうか分からない」などと経済面に不安を抱えたり、新車より納期が早い中古車を希望したりした人たちが購入したケースも多かったという。大倉店長は「当店では、平均的な価格として50万円で車を買い求める人が多い印象です」と明かす。

 一方で、来店しなくても購入できる取り組みを進める店側の努力も奏功しているようだ。「店舗の中に入りたくない」などの声を受け、南松本店では購入希望者から問い合わせがあった車を撮影した動画を、メールで送るサービスを始めた。「安心して購入できた」などと評価する声も寄せられたという。

 大倉店長は「コロナがあったからこそ、我々ができることは何かを考えた。車を見ずに購入しているお客さんは、肌感覚では増えていますね」と試行錯誤を続けている。

2020年12月3日 9時27分 毎日新聞
https://news.livedoor.com/article/detail/19318796/