※夕刊フジ

 コロナ禍の不安が続くなかで大学受験シーズンが年明けから本格化する。最大の注目は早稲田大の入試改革だ。政治経済学部では数学の受験が必須となり、政経を含む3学部で大学入学共通テスト受験が導入される。動いた早大に対し、ライバルの慶応義塾大の入試科目に変更はなかった。志願者数にどんな影響が出るのか。

 早大は2021年度入試要項で、政経学部入試に大学共通テストの「数学I・A」の受験を必須とした。大学独自入試との併用型では、共通テストの数学、外国語、国語、選択科目の4科目が25点ずつで計100点。これに日英両言語の長文を読解し設問に答える独自の「総合問題」(100点満点)が課され、計200点満点となる。

 受験関連の分析に定評のある「大学通信」の安田賢治ゼネラルマネジャーは、「早大政経学部では、入学後の基盤教育にデータサイエンスを導入するため、入試でも数学科目を追加した。一部の入学者は仮面浪人して東大や一橋大などに流れてしまうことが多く、入学後の定員割れを回避するための改革だろうが、志願者の減少は避けられそうにない」と解説する。

 大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は「今年は新型コロナの影響で高校で授業の遅れが目立つ。受験生の本音は『早大、入りにくくなったな』ということに尽きるはずだ」とみる。

 早大では、スポーツ科学部と国際教養学部でも共通テスト受験が必須となった。大学入試センターによると、2021年度の共通テスト志願者数は53万5244人で確定。前年の大学入試センター試験より2万2455人減った。

 例年、数学への苦手意識から私大文系を選ぶ受験生は多い。「私大の経済系の場合、早大政経を避ければ受け皿は慶大経済学部となり、数学受験を避ける私文専願のトップ層を総取りできる。志願者が増加する可能性も高い」と前出の安田氏。

 慶大はなぜ数学を導入しないのか。安田氏は「慶大ではかつて経済学部のほか法学部でも数学を必須科目とし、センター試験利用型入試にもいち早く参加したがいずれも廃止した。令和の慶大は、数学を必須科目とせず共通テストにも参加しない。過去を踏まえた判断ともいえる」と語る。

 ただ、慶大も一筋縄ではいかない。「慶大では小論文が必須科目で各学部に特化した対策が必要だ。慶大を本命とするなら、早慶の他学部を多く併願する余裕はなくなるだろう」と安田氏。

 動の早大、静の慶大の構図だが、共通する課題はコロナ禍で強まる受験生の「ローカル志向」だ。前出の石渡氏は「地方の進学校でも、感染リスクを恐れ『早慶はやめておくべきでは』という助言が増え、地方トップの私大や文系3科目で受験できる地方の国公立大が受け皿になりそうだ」と指摘する。

 埼玉大経済学部や、信州大人文学部など前期日程から文系3科目(英・国・地歴公民)での受験に対応した国公立大は少なからずある。

 前出の安田氏は「関西圏では、難関国公立の受け皿に関関同立、なかでも同志社大が注目で、入学者の質が底上げされるとの見立ては強い」と語った。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e6dbfc068536ef847336679ab8bcad387ca6d926
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