全く怖がらない死刑囚と言うのもいる
こいつ↓のエピソードは色々あって面白い

さて、司法大臣からの命令があって、いよいよ死刑執行の朝だった。監房から何気ない様子を作って連れ出した私を大米竜雲はジロリと横目で見て、

「とうとう、来やがったか!」

と独り語のように言って、草履をつっかけながらニヤリと笑った。


大米竜雲は供物の饅頭も平気でむしゃむしゃと食って、茶もがぶがぶ飲んでしまふと、煙草を一本吸わせてくれと言い出した。
死土産に一本吸わせてくれたっていいじゃねえか!

仕様がないので、相談して特に二本許す事になって、火を点けて煙草を与えると、如何にもうまそうにぷかりぷかり落着いて吹かしていたが、三分の二ばかり吸うと、急に放り棄てて

「永えこと吸わねえもんだから 畜生!頭がクラクラしやがらぁ。さあ、やって貰おうか」

係官が目隠しをしようとすると、大米竜雲は頭を振って牛のように吠えた。

「止せやいッ!クタばっちまえば、どうせ見えねえんだアッ!」

あくまでも承知しないので目隠しなし。時間は来た―