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新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)を巡り、静岡県が店名ではなく多発した地域を公表したことに、
風評被害を懸念する声が上がっている。

対策を講じたクラスターとは無関係の店まで客足がとまる事態になるためだ。
一方の県は、地域での感染を早期に封じ込める効果を強調する。

感染者に関する情報については、県が静岡、浜松両政令市以外の市町を取りまとめて発表している。
その県は6日以降、〈1〉特定地域で複数のクラスターが発生〈2〉特定地域の複数店で感染者が判明――の場合、
該当する店舗名でなく、地域名を公表することにした。その対象となったのが、富士市と伊東市の一部地域だ。
なお、静岡、浜松両市は公表の場合は店名にしている。

富士駅北地区は地域名の公表後、商店街の人通りが途絶え、多くの店舗がシャッターをおろしたままになった。

JR富士駅北口前で約40年間、飲食店を営む男性は12日の夕刻、「12月の土曜夜というのに、この人出。
まるでゴーストタウンだよ」とため息をついた。この日だけで4組、約50人の予約がキャンセルされ、
訪れたのは2〜3人の個人客のみ。2時間前倒しの午後9時に営業を終えるため、実質的な「時短営業」になった。
80歳代の運動具店主は、「臆測やデマで、この地区全体が風評被害にあっている。店名の公表ならば、
きちんと対策している店がわかるのに」と憤った。

同じく地域名を公表された伊東市でも、「迷惑だ」という声が上がった。

伊東飲食業組合の上村昌延組合長は、「その地域内で商売をしている人たちには『うちからは感染が出ていないのに』
という意見がある」と打ち明ける。市内では、自主的に休業した飲食店が、忘新年会シーズンに向け徐々に営業を再開する動きもあった。
上村さんは「市全体で夜は人が出ない状況。『Go To トラベル』事業停止の影響も大きい」と飲食業界が置かれる苦境を強調した。

県が地域公表としたのは、感染の急拡大を何としても抑え込みたいという理由がある。クラスターが発生した店名の公表では、
本当の感染源である別の店からの「はしご」が原因になった場合に、感染がさらに広がる恐れがあるとする。
公表で地域への人の往来を減らすとともに、地域内の関係者らを対象に検査を実施して感染者を徹底的に割り出す。
これらにより拡大を封じるという考え方だ。

難波喬司副知事は、公表された地域内で風評被害があることについて、「感染を抑えるために、その地域には申し訳ないが、
我慢してもらいたい」と話した。県は今後も店名ではなく、地域名の公表を続けていく考えだ。

こうした状況に、「クラスターが出た店と公表されたら終わりだ」(富士市の飲食店)など、店名公表に否定的な現場の意見もある。
富士市の小長井義正市長は、「地域の特定で対策が講じやすくなり、市民の安心にもつながる」と理解する一方、
「間違った情報やうわさが流され、市民に不安も広がっている」と店名公表の必要性も訴えている。