投資助言サービスを手掛けるジェイ・キャピタル・リサーチの共同創業者、アン・スティーブンソン・ヤン氏は新型コロナウイルス感染が広がる前は米国からほぼ毎月のように中国に出張していた。だが、コロナが落ち着いた後でもかつてのように訪中を繰り返すかというと、ひどく疑問だ。

  中国とのビジネスを手掛ける人々の間では公安当局に拘束されたり、中国と欧米の地政学的対立の犠牲者になるリスクを巡って不安が高まっている。

  スティーブンソン・ヤン氏の懸念は以前は地方当局者とのもめ事が中心だったが、2018年終盤にカナダ人2人が拘束されると不安は募るばかりだった。オーストラリア国籍の成蕾氏は今年8月から、国家安全上の懸念で身柄を拘束されたままでいる。

豪国籍で先月拘束のテレビキャスター、中国の国家安全を脅かした疑い

  中国で四半世紀を過ごした後、約6年前に中国人の配偶者や子供と共に米北東部に移ったスティーブンソン・ヤン氏は、「中国には多くの友人や親類がおり、ビジネスもあるが、リスクを冒す価値はないように感じている」と話す。

  十数人の企業幹部や外交官、コンサルタント、学識経験者に取材したところ、多くが中国への渡航のほか、今年6月の国家安全維持法施行後は金融ハブの香港訪問についてもリスクが高まっていると考えている。中国の不透明な司法制度では、警察や検察、裁判所が秘密の多い共産党委員会の監督下にある。より広義となっている国家安全法制の下で当局は裁判も開かず長期にわたって身柄を拘束することも可能だ。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-12-22/QLQ111DWX2Q001