大和郡山市は、県内市町村が共同で債権回収に当たる「県住宅新築資金等貸付金回収管理組合」から脱退したことに伴い、市に移管された未回収の債権(188件、元利計約6億7000万円)の公正・円滑な回収を目指して新たな条例を制定した。

 市長の諮問を受け、借りている人に返済能力がないことなどの判定を行うため、弁護士らで構成する審査会を設置する規定などが盛り込まれた。条例は2021年4月に施行され、市は効率的な回収業務を進める。

 大和郡山市では、1980年代を中心に同和地区の住宅整備名目で計約24億円を貸し付けた。しかし、80年代半ばに約9億円の不正貸し付けが発覚したこともあり、1969年の事業開始から半世紀を経た未回収金(20年3月末)は県内で最も多く、元金で約5億7000万円に上る。

 同市を含む県内23市町村は2005年に管理組合を設立。その時点の大和郡山市の未回収金は元金で約10億円あったが、組合を通じて少しずつ回収した。しかし、近年は回収額が減り、組合に支払う負担金が回収額を上回るようになったため、20年3月末で組合を脱退、債権を市に移管していた。

 条例が承認された12月定例議会で上田清市長は「(この問題が)負の遺産として市の行政に影を落としていることは厳然たる事実。若い世代の職員にも歴史を正しく伝える必要がある。条例の規定に基づき問題の解決に取り組みたい」と述べた。

 多額の未回収金の影響で、市の普通会計は10年度まで7年連続で赤字になったが、10〜14年度に税金約10億円を投入し、未回収金の帳簿上の赤字を解消している。このため、4月に移管された債権を市が仮に放棄しても、新たな市民負担が生じることはないという。【熊谷仁志】

毎日新聞 2020年12月29日
https://mainichi.jp/articles/20201229/ddl/k29/010/270000c?inb=ra