中国がオーストラリア産ワインに不当廉売があったとして最大200%超の関税を上乗せし、豪州のワイン業界が悲鳴を上げている。豪中の貿易摩擦は激化の一途をたどっており、ワインもあおりを食った形だ。最大の得意先をもはや当てにできず、日本などへの販路拡大を模索する動きも出ている。

 シドニーから北へ車で約2時間走ると、同国有数のワイン産地、ハンターバレーのブドウ畑が広がる。創業160年以上の老舗醸造所ティレルズ・ワインズの4代目、ブルース・ティレル社長(69)は、豪州産ワインが不当廉売されているとの中国の主張を、「完全にうそっぱちだ」と一蹴した。

 ワインだけでなく、牛肉や大麦といった豪州産品輸入に次々と制限措置を導入する中国を、ティレル氏は「学校のいじめっ子」に例える。「鼻っ柱をへし折れば逃げていく」と、世界貿易機関(WTO)提訴などで対抗する豪政府を支持した。


オーストラリアの老舗ワイン醸造所「ティレルズ・ワインズ」のブルース・ティレル氏=17日、オーストラリア・ハンターバレー
 中国では、経済成長に従って豪州産ワインの消費が拡大。政府機関「ワイン・オーストラリア」によると、2020年6月までの1年間の対中ワイン輸出額は約12億豪ドル(約940億円)と、08年から10倍以上に拡大。金額ベースで今や輸出先首位にのし上がった。

 ティレルズの輸出のうち、中国向けは最大15%を占める。中国の高率関税による影響は限定的だったが、社長は「取引の最大9割が中国向けの醸造所もある」と明かした。

 豪中関係改善の兆しが見えない中、ティレル氏はリスク回避として、日本や韓国、台湾での販売強化を検討している。約20年前に進出した日本市場について、同氏は「日本と豪州は(政治面などで)非常に近い関係だ」と期待する。

 ただ、日本市場での販売促進には課題も多い。ハンターバレーでワインを醸造している小林敦子さん(57)は、「日本では欧州産ワインなどが定着する一方、豪州産はニッチの扱いだ」と指摘。国際情勢に左右されないよう、豪州国内市場での販促を目指している。

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