※ゲンダイ

2020年は毎日のように全国各地で「クマ出没」のニュースが流れた。

4〜10月の出没数は1万7746件と16年度同時期を上回り、過去最多を更新。本州の広い範囲で、クマによる農業被害や人身被害が相次いだ。

原因について環境省は「餌のブナ類やナラ類などの木の実が凶作で、農作物を目当てに人里に近づいた」と分析している。

全国有数のマタギの里、山形県小国町でマタギ歴50年以上の遠藤春男さん(71)がこう言う。

「森というのは木や落ち葉が保水役、肥料となって木々が育ち、花を咲かせ、実をつける。19年から20年にかけ、極端に雪が少なかったため、水不足になった。木は1年かけて実を結ぶが、2、3年前に豊作になり過ぎたため、花芽が一気につかなくなり、並作、凶作になったのです」

■昔は人を襲わなかった

マタギは1年間で子どもが何頭増え、どれくらい自然死するかを計算し、予察駆除で何頭取るかを決める。小国町でも毎年、55頭取らなければ増えていくという。10年ほど前は狩猟許可が簡単に下りたため、マタギの判断で捕獲数を調整し、バランスを保っていた。ところが今は捕獲数が決められていることから、1頭でも多く捕獲しようものなら、大問題となる。20年は人がクマに襲われる被害が頻発(ひんぱつ)したが、クマが増えればますます被害が増える。

「昔のクマは人を襲うことは、そんなになかった。それが今はうなりながら向かってくる。襲ってくるクマは右肩から左肩まで幅がある大きな月の輪が特徴です。人間を恐れず、襲い掛かってくる。同じ家系ではないかとみて、山形大の研究室で遺伝子を調べているところです」(遠藤さん)

近年は暖冬の影響で冬の寒さにも耐えられるようになり、冬眠期でも各地でクマが出没したという報告が寄せられている。

2020/12/31 06:00 
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/283319