>そしてMMT理論にはもう一つ、“危険な落とし穴”がある。
>日銀の場合は、欧米の中央銀行とは異なり、
>大規模に買い入れた国債はすでに超低金利となった時代以降に発行されたものばかりである
>それゆえ、日銀が保有する資産の加重平均利回りはわずか0.2%にも満たない。
>つまり日銀は今後、短期金利をわずか0.2%に引き上げるだけで“逆ざや”に陥ることになる。
“>逆ざや”の幅が1%ポイント拡大するごとに、
>日銀は年度あたり5兆円弱の損失を被ることになる。
>日銀の自己資本が、引当金まで合わせても9.7兆円しかないこと、
>また、金利の引き上げが必要な局面の期間が短く済むという保証はなく、
>長引く可能性もあることを考えてみれば、
>この“逆ざや”による負担は日銀にとって相当に重いものとなる。

>日銀の資産規模がすでに700兆円近くにまで膨張しているにもかかわらず、
>自己資本が少額しかないことからすれば、日銀がひとたび“逆ざや”となれば、
>おそらくほどなく債務超過に転落する可能性が高い。
>その状態が放置されれば、債務超過幅が数十兆円レベルにまで膨張する可能性も否定できない。

>中央銀行の債務超過は、国が国民の税金を原資に補填しない限り、埋めることはできない。
>元来、世界最悪の財政事情にあったわが国において、
>異次元緩和という“事実上の財政ファイナンス”に手を染めた結果、
>目下のところは一見、平穏が保たれているように見えても、
>私たち国民は、さらなる重い負担を負わされる潜在リスクを抱えているのである。

>「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴
>河村小百合(日本銀行入行 91年日本総合研究所入社 主席研究員)