性交渉後、72時間以内に服用することにより、高い確率で妊娠を防ぐことができる緊急避妊薬。日本では医師による診察を経た上でないと入手することはできないが、目下、薬局での販売を可能にする制度改正が進められている。
 薬へのアクセスが容易になることによって意図しない妊娠が減ると期待される一方、性の乱れや薬の悪用を心配する声も根強い。現役の産婦人科医であり性教育の事情にも詳しい重見大介氏に、緊急避妊薬市販化の問題を考える上で大事なポイントを聞いた。

 少子化の進行に拍車がかかる中、人工妊娠中絶の件数はここ10年でほぼ横ばい状態を見せている。中でも未成年が占める割合は小さくなく、人工妊娠中絶を受ける未成年者の数は平均で1日約40人と看過できない数字だ。
 意図しない妊娠と人工妊娠中絶の数は必ずしもイコールではないが、緊急避妊薬が市販化され、身近なものになれば「意図しない妊娠によって体への負担、心への深い傷、経済的負担を負う女性が少なくなる」と語るのは、産婦人科医の重見氏だ。

 「緊急避妊薬は72時間以内に服用する必要がありますが、服用する時間が早ければ早いほど避妊の成功率は高くなります。したがって、薬へのアクセスが改善されることによって、実効性は確実に上がると考えられます」

 緊急避妊薬が市販化されることによってもたらされるメリットは、それだけにとどまらない。
「緊急避妊薬が市販化されている諸外国では1000〜2500円程度で買えるところが多く、中には未成年に無料で提供している国もあります。しかし日本では、緊急避妊薬の値段は各病院が任意で定めており、1回の服用で大体1万5千円から8000円と高価です。現在、緊急避妊薬は保険診療の対象外であり全額自己負担となっていますが、薬局での販売が実現すれば、価格が大幅に下がることも期待できるかもしれません」


 緊急避妊薬は現在世界の90カ国以上で市販化されており、日本でもしばしば厚生労働省によって検討され、直近では2017年に議題に上るも否決された過去がある。一体どんな要因によって、日本における緊急避妊薬の市販化は妨げられてきたのだろうか。重見氏はこう語る。

 「決定を下す役割を担う専門家の方々の判断を鈍らせている理由として、市販化されることによって薬が悪用されるリスクと、女性が性に対して奔放になってしまうといったことへの懸念が挙げられています。2017年の検討会では産婦人科の学会である『日本産婦人科医会』もそのような意見に賛同し、『別の避妊方法に頼るべきだ』という理由で市販化に賛成する意見を退けています」


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