■重症者を集中的に診る病院がない日本

日本の感染者数は、もっとも感染者が多いアメリカの35分の1だ。医師数こそ米国の96%だが、急性期病床数は3.17倍もある。数字から見ると、なぜ、この程度の感染者数で、「重症ベッドは切迫」などと医療崩壊が叫ばれてしまうのだろう。

日本では重症者を集中的に診る病院がない。1月4日現在、都内の病院に入院している重症患者は108人だ。東京都は重症者用ベッドとして220床を既に確保しており、250床まで増やすように医療機関に要請中だ。

では、どのような病院が重症患者を受け入れているのだろうか。(中略)知人の都立病院勤務医に聞くと、「1つの病院で受け入れている重症患者は5人程度」だという。多くの病院が少数だけ重症患者を受け入れているようだ。

世界のやり方は違う。表4は、第1波のある時点でのアメリカのマサチューセッツ州における主要病院の新型コロナウイルス感染者の受け入れ数を示している。トップのマサチューセッツ総合病院は278人で、このうち121人は集中治療室での治療が必要な重症患者だった。受け入れた患者数は、現在の都内の重症患者数の総数よりも多い。

マサチューセッツ総合病院は、ハーバード大学の関連施設で、世界でもっとも有名な病院の1つだ。普段は先進医療を担っている。病床数は約1000床で、日本の大病院と同規模だが、コロナ禍とともに、重症患者を一手に引き受けたことになる。多くの専門医や看護師を抱えるため、多数の施設に分散して受け入れるより効率的だ。

このような戦略をとったのはアメリカだけではない。中国は第1波で武漢にコロナ専用病院を立ち上げたし、欧州各国も重症患者を集中的に治療した。日本のようなやり方をした国は世界でも珍しい。

https://forbesjapan.com/articles/detail/39110/1/1/1