東京都が8日に公表した新型コロナウイルスの新規感染者は2392人で、2日連続で2000人超えとなった。

 7日の都のモニタリング会議によると、入院患者数は確保病床の約8割に達し、専門家からは医療体制の危機的状況を訴える切実な声が出ていたが、怖いのは、感染が判明しても病院やホテルなどの施設に入ることが出来ない患者が増えていることだ。

 警察庁のまとめによると、新型コロナに感染後、医療機関以外の自宅などで体調が悪化して死亡した人が昨年3〜12月で計122人に上る。このうち、都道府県別で最多だったのは全体の約3割を占めた東京(36人)だ。

 都のまとめによると、7日時点で、自宅療養や入院・療養等調整中の人は計1万人余りと急増。このままでは多数の死者が出かねない。とはいえ、1万人もの感染者を受け入れる病院やホテルの確保は容易ではなく、そうであれば都の施設を使うしかない。幸い都心部に未使用の巨大な受け入れ施設がある。東京五輪・パラリンピックの選手村だ。
軽症者向けに約1万8000床分が確保できる
東京は2日連続でコロナ感染者2千人超え なぜ五輪選手村を自宅療養者の受け入れ施設に活用せず?
東京・晴海の五輪選手村(C)日刊ゲンダイ
 実際、政府・与党は昨年4月、都内で新型コロナのオーバーシュート(爆発的患者急増)が発生した場合の病床不足に備え、軽症者らを一時滞在させる施設として選手村を活用する案を検討していた。当時、公明党は政府に対して「(選手村は)軽症者向けに約1万8000床分を確保できる」と提案し、安倍首相も参院決算委で、東京五輪警備で警察官が宿泊予定だった施設の活用を検討している、と説明。小池都知事も選手村活用の可能性を示唆していた。

 東京湾を望む晴海埠頭に整備された選手村には21棟の建物があり、計3850戸、約1万室ある。部屋の広さはベッド1台のシングルが9平方メートル以上、2台のツインは12平方メートル以上だ。各棟の出入り口にはスロープが設けられているから、車いすなどのお年寄りも安心して療養できるだろう。

 激務の保健所職員なども、今のように感染者が各地に散在しているよりも、はるかに管理しやすくなるはずだ。

 都はなぜ、自宅療養者らの受け入れ施設として選手村を活用しないのか。あるいは今後、活用する予定はあるのか。都に問うと、「選手村活用の話は(部内で)聞いたこともないし、出てもいません」(感染症対策部)と回答。この状況になっても検討すらされていないらしい。

 都内の大手不動産業者は「コロナ病棟で使われた施設として資産価値が下がるのを懸念する声があるのでしょう」とみるが、今のような緊急時こそ活用するべきではないのか。

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