昨年4〜5月以来2回目となる首都圏1都3県の緊急事態宣言は、再度の経済的打撃をもたらすことになりそうだ。専門家は、1カ月で3兆円以上の家計消費が失われると試算、企業の破綻や失業者の増加も加速すると懸念を示す。

 菅義偉首相は、感染拡大が飲食の場で起きている場合が多いとの見方を示し「限定的に、集中的に行うことが効果的だ」と強調。2月に見込むコロナ特措法改正に関して、「給付金と罰則をセットにして通常国会に提出する」と述べた。

 ただ、1都3県は国内の家計消費の約3分の1を占めるとされるだけに、経済的な打撃は小さくない。

 第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストの試算では、1都3県に1カ月間、緊急事態宣言が発令されたと仮定した場合、家計消費は通常よりも3兆3000億円減、GDP(国内総生産)ベースで2兆8000億円の損失となり、半年後に14万7000人の失業者が出るという。

 永濱氏は、「1回目の宣言のときと比べると影響は小さいが、廃業や倒産の増加要因にはなるだろう」とみる。

 失業をめぐっては、すでに過去の不況を上回る数字も出ている。東京商工リサーチのリポートによると、昨年12月29日の時点で今年1月以降、早期・希望退職を実施すると明らかにした上場企業は18社に達したという。募集企業が10社を超えたのは2009年のリーマン・ショック直後の10社以来だ。雇用調整助成金も11月末までに599の上場企業が申請・計上しているという。

 緊急事態宣言によって、各企業の倒産や破綻にも拍車がかかる恐れがある。菅首相は、観光支援事業「Go To トラベル」の全国一時停止措置が11日で期限を迎えることに関し「再開は、なかなか難しい」と述べている。

 信用調査会社、東京経済情報部の森田幸典氏は、「2021年も昨年同様に飲食やアパレル、宿泊を中心にギリギリの状態が続き、支援策が切れたら大型倒産も続出する可能性がある。取引先の倒産や廃業による焦げ付きで資金繰りが悪化し連鎖倒産という形も出始めている」と語る。

 森田氏は、「過剰債務に陥った企業の返済のめどがたたず、『倒産の第1波』が来る可能性もある。緊急事態宣言の発令で、倒産の波は規模が大きくなり、スピードが加速するだろう」と指摘した。

2021年01月07日 08時34分 公開
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